お菓子の国の王子様
「はい、ドイツのシュトゥルーデルという薄いパイ生地にりんごとくるみが入っています。社長、アレルギーは大丈夫ですか?」

「俺は大丈夫。ちょうどコーヒーもできたし、仕事の前にいただこう」


二人は応接用の椅子に向かい合って席に着く。雅が入れたコーヒーの香りは、喫茶BONを思い起こさせる。
ひと口コーヒーを飲んだ美愛は、思わずはっとした。


(あれ、このコーヒーの後味.....ダークチョコレートとチェリーだ。もしかして、これ......)


「花村さん、どうしたの? コーヒーは口に合わなかった?」

「ち、違います。とても美味しいです。.....あの、このコーヒーはもしかして南ドイツの『Bayern Kaffee』ですか?」


雅は目を大きく見開いて驚いた。
 

「えっ、すごい! よくわかったね。日本ではこれを知っている人はあまりいないんだよ」

「確かに、日本では販売されていませんね」
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