お菓子の国の王子様
「そうなんだよ。以前ドイツに行ったときに気に入ってね。俺の兄が先月ヨーロッパに行った際、買ってきてくれたんだ。花村さんが作ったこれもおいしいよ」

「ありがとうございます。これは父のファミリーレシピなんです」


嬉しそうに微笑む美愛。


「そういえば、お父さんはドイツ系アメリカ人だったっけ?」

「はい、そうです。父がこのコーヒーを好んで飲んでいます。」


(女性とこんな風に気を使わずに会話するのは、いつぶりだろう?
彼女との何気ない話が心地よい。それに、話も合う)


少し真面目な表情を浮かべた雅が、仕事の話を始める。


「実は今、南ドイツのあるお菓子を扱いたくて交渉しているんだけど、うまく進まなくてさ。相手は大企業ではなく、地元の小さな昔からある会社なんだけど、何せメールのやり取りができないんだよ」

「メールができない......ですか?」


美愛は不思議そうな表情で雅を見つめた。
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