お菓子の国の王子様
「コンピューターを使っていないらしい。未だにすべて電話とファックスだけみたい」

「今時、そのような会社があるのですね......あの、どのようなお菓子かお伺いしてもよろしいでしょうか?」


お菓子が大好きな美愛は、お菓子のことが気になって仕方がない。


「ひと口サイズのクッキー生地のカップの中にヘーゼルナッツクリームのボールが入っていて、その上にチョコレートがかかっているんだ」

「それは絶対に美味しいお菓子だ」


呟きながら、美愛はそのお菓子を思い描き
笑顔がこぼれた。
引き続き、雅が説明する。


「この会社の社長はドイツ語を主に使い、英語は片言。いつも交渉がもう少しのところでうまくいかない。さっきも言ったように、連絡手段は電話かファックス。これを見てくれる? 向こうから送られてきたファックスなんだけど、字の癖がすごいでしょう? うちの会社のドイツ語ができる人でも、手をこまねいている状態なんだ」


美愛は雅からファックスを受け取った。それは確かに癖の強い手書きのものであり、さらに標準ドイツ語ではなく高地ドイツ語が使用されていたため、理解しづらかったのだろう。
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