お菓子の国の王子様
予定していた3時よりも早く終わった二人は、エレベーターホールに向かった。


「助かったよ、ありがとう。この後はどうするの?」

「このまま帰ろうかと思っています……」


少し間が空いて、雅が尋ねる。


「あのさ......ケーキの食べ放題、一緒に行かない?」

「えっ、ケーキの食べ放題......社長が?」


誘うのに少し緊張している雅はバツが悪そうにし、そっと右手を頭の後ろに添え、はにかんだように続ける。


「さっきも言ったけれど、甘いものが大好きなんだよね。それに、友人からホテル9
(クー)の個室ケーキ食べ放題のチケットをもらって。その予約が今日なんだ。こんなオジサンと一緒で申し訳ないんだけど、もしよければ、行かないか?」
< 54 / 169 >

この作品をシェア

pagetop