お菓子の国の王子様
ホテル9(クー)のケーキ食べ放題は、女性に大人気で予約が取りづらいことで知られている。


美愛は思わず想像してしまう。


(ラグジュアリーホテルであるため、料金は高めだし、その上、個室でなんて夢のようなひと時をすごせる......)


『一度は行ってみたい』と憧れている美愛。


「ぜ、ぜひご一緒させてください! 社長は筋金入りの甘党なんですね。甘党仲間が増えて嬉しいです。あっ、社長はオジサンではありませんよ。社長がオジサンなら、うちの父はオッチャンということになりますね?」


首を少し傾げてしみじみと言う美愛に、雅の緊張感も解けて思わず吹き出してしまった。


「ぷっ、ククク......じゃあ、行こうか」





地下駐車場に向かい、雅は助手席のドアを開けた。

車に乗り込む瞬間、美愛の心にある思いがよぎる。
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