お菓子の国の王子様
「うちの会社で働いてみない?」
 
「人と比べる必要はないよ」

「美愛は美愛のままでいいんだよ」

家族がそう言ってくれるたびに、何の取り柄もない自分が嫌になってしまう。





私の父、ジョセフはドイツ系アメリカ人で、友人と共に医療機器の会社、
Hope Medical を立ち上げた。
幼い頃から私たち家族は日本、ヨーロッパ、アメリカを転々とする生活を送り、姉たちと私は高校生になると、長期の夏休みや冬のウインターブレイクの間、毎年父の会社でインターンとして働いてた。
父は頭の良い姉たちに経営のことも教えていたらしいが、私は......主に父のスケジュール管理や来客対応、会議の準備、及び資料作成を行っていた。


私の大学入学に伴い、父がHope Medical Japanの社長に就任し、両親と共に日本に移った。


産婦人科医の母、久美子(くみこ)はこれを機に地元のコミュニティに貢献することを決め下町に花村レディースクリニックを開業。


6歳年上の姉、圭衣(けい)は大学卒業後、アメリカで自らのブランド「Cool Beauty」を立ち上げた。
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