お菓子の国の王子様

「はい。私ができることで社長を支えられればと思いますが、どこまでが許容範囲でしょうか？」

「どういうこと？」

「面接時に副社長がおっしゃった『色目を使わない』ということです。自分にはその気がなくても、もしかしたら社長を不快にさせてしまっているのではないかと」


副社長は何かを考え込んでいるようだ。


「それは大丈夫。美愛ちゃんはそんなことをしないと知っているし、純粋にあいつの健康を心配してくれている。これでも、僕は人を見る目があるんだよね。あのさ、申し訳ないんだけど、明日雅におにぎりを作ってくれるかな？」

「お、おにぎりですか？　はい、できますが」


副社長は、どこか安堵の表情を浮かべていた。


「ありがとう。あいつは簡単につまめるものなら食べると思うよ。美愛ちゃんのお弁当はいつも美味しそうだしね。ちなみに、あいつは鮭と昆布が好きなんだよ」

「わかりました。少しでも食べていただければ嬉しいです」

「絶対に食べるよ、雅。美愛ちゃんがうちに来てくれてから、停滞していた契約案件やあいつのもう一つの夢が動き出したんだよ。本当にうちに来てくれて、そして雅を支えてくれて感謝しているよ」