お菓子の国の王子様
「はい、でも晩ごはんの残りもあるので、すべて今朝作ったわけではありません」

「それでもすごいね。僕は感心したよ」

「花村さんはいつ料理を覚えたの?」


ハーブティーのカップをローテーブルに置きながら、社長が尋ねる。


「手伝い始めたのは小学校の頃からです。母は各国のレディースクリニックで働いていたため、シッターさんと一緒に夕食を作っていました」

「あっ、いいアイデアを思いついた! 美愛ちゃんさ、雅のところで料理を作ってくれない?」

「は?」

『えっ?』


唖然としている私と社長をよそに、副社長は話を続ける。


「こいつの所で料理をしていたおばあちゃんが、年齢のために辞めてしまったんだよね。それに、忙しいと雅は食べなくなってしまうし。仕事帰りはどう?」

「おい、大和。花村さんにも都合があるだろう。無理に押し付けるな」
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