お菓子の国の王子様
雅さんはこの1カ月間、私のアパートでの出来事を説明しながら、同居の意向を伝える。


父さまは眉間にシワを寄せて腕を組みながら聞いている......これは機嫌が悪いな。
反対に母さまはニコニコと笑顔を浮かべている。これは絶対に勘違いしている、同棲と。
母さま、私と雅さんは社員と社長の関係なんだよ!きっと母さまは、私に初めて彼氏ができたと思っている。ちがーう!


「そしてこちらが、弁護士の伊集院涼介の立会のもとで作成した契約書です。もちろん、お二人が安心できるのであれば、私の身辺調査を行っていただいても構いません。美愛さんの部屋は、内側から鍵をかけることができます。ご家族の皆様をいつでも歓迎いたしますので、ぜひ遊びにいらしてください」

「よかったわねぇ〜、こんな素敵な方なら私も安心。美愛ちゃんももう22歳で成人だし、親が口を出する事じゃないもの」


母さまのハイテンションはまだ続いている。


「状況は理解しました。これでは娘にとってのメリットだけのようですが、この同居によるあなたの
メリットは何ですか?」


父さまがここで初めて口を開いた。父さまは日本語も流暢に話す。
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