お菓子の国の王子様
「俺もジャムを食べてみたいな。せっかくだから、いただこうよ?」


ああ、雅さん、あなたは甘い!
こんなことをしたら、これから母さまにいいように使われることになるから、父さまのように。


私はドヤ顔の母さまと、少し離れたところで肩を震わせて笑いを堪えている父さまを恨めしそうに見つめ、首を横に振った。


よかったわねぇ、父さま。
あなたに仲間ができて!





どうにか自宅を出発し、私のアパートに到着した。


もう涼介先生、引越し業者と警備の方々が私たちを駐車場で待っている。
部屋に行く前に、警備の方から言われた。


「何があっても、ヤツが出てきても、とにかくあなたは立ち止まらずに、部屋の中へ入ってください。あとは私たちと伊集院先生にお任せください」


どんなに静かに歩いても、隣人は必ず現れる。まるで私の行動を逐一見ているかのように。
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