前世の婚約者からは決して抜け出せない底なし沼恋。
「お母さん。おはよう」
私はお母さんに挨拶をして、リビングにある机へと座った。
「今日はどこかへ行くの?」
「うん。絵里香ちゃんと一緒に買い物に行ってから、図書館でテスト勉強するの」
今日は絵里香ちゃんと文房具を見に行ってから、図書館に行く予定だったのだ。テスト勉強は仕方ない。私だって、新入生早々に落ちこぼれになってしまいたくはない。
私は近くにある総合商業施設の名前を言えば、お母さんは軽く頷いた。
「わかったわ。気を付けて行きなさいよ。帰りは遅くならないのよ」
「はーい」
「不審人物の目撃情報だってあるんだからね。見掛けたら、すぐに逃げなさいよ」
私はかじりついていた食パンを食べつつ、うっと喉を詰まらせてしまいそうだった。
不審人物……確かに、私と別れたはずなのに、帰り道を尾行していた藤崎くん……とっても、不審人物だったかもしれない。
「はーい……」
とにかく、この週末はあの二人には会わないんだし、私はテストに向かって勉強しよう……。
◇◆◇
総合商業施設の中で待ち合わせしていた絵里香ちゃんに会うと、私は大きく手を振った。