光の聖女は闇属性の王弟殿下と逃亡しました。
第十二話 人の話を聞いてくれ!
寝殿造りのような城ほどもある建物の聖女機関。在籍している聖女や聖騎士団の本部でもあるこの場所は王城と続いている。
聖女機関のイゼルの執務室。セレスティアを連れ戻したのかと思いきや、イゼルは憤慨しているままだった。焦っているようにも見える。
「セレスティアがいない!?」
「すでに出立してしまってました! シュタルベルグ国に開放している離宮に残っているのは荷物運びなどの後発部隊だけです!!」
「いったいどこに……」
「シュタルベルグ国ですよ!! 早く連れ戻さないと、手が出せなくなります!!」
まるで駆け落ちのように、あっという間にいなくなってしまったセレスティアと王弟殿下ヴェイグ。
婚約者と言う理由で幼い頃からセレスティアを城で迎えていたが……行く場所などなかったはずだった。
だから、婚約破棄をすれば縋ってくると思っていた。でも、腹立たしいほど憎まれ口しか叩かないセレスティア。……どうして、いつも思い通りにならないのか。
しかも、突然現れたシュタルベルグ国の王弟殿下ヴェイグが連れて行ってしまった。
聖女機関にも姿をあらわさないままで。
セレスティアの黒髪が出現したあたりから、聖女たちはセレスティアを不気味がっていた。
当然だ。光のシードに選ばれるのは、光の聖女なのだから。それが、黒髪が出現した聖女など聞いたこともない。黒髪が薄く金色になる聖女がいたことすらあると言うものなのに……。あの黒髪だけは、誰も説明ができない。
セレスティアでさえ理由はわからないと言い、話しすら続かなかった。
それなのに、イゼルはセレスティアのことで私を責め立てている。
「どうして、すぐに連れ戻さなかったのです!」
「そんなことをすれば、私がセレスティアを迎えに行くみたいではないか!」
「当然です!! いったい何をやっておられるのです……!!」
いつセレスティアと王弟殿下ヴェイグの二人が出会ったのか。セレスティアが部屋で魔法の練習をしていたなど、信じられない。
セレスティアは、そんな練習をするような聖女ではなかった。
能力も高かった。でも、それがいつしか黒髪が出現した。
「光の祝祭も近いのに……」
「それなら、私はエリーゼを推薦しよう。光の祝祭はエリーゼで進めるんだ」
「何故、エリーゼなのです。エリーゼは、セレスティアのような能力はありません」
「そんなことはない」
エリーゼのおかげで、今まで誰にも気づかれずに逢引きができたんだ。セレスティアほどの能力の高さはなくてもエリーゼもそれなりに高いはず。大丈夫だ。
それなのに……。
「すぐに早馬を出すんだ!! シュタルベルグ国の飛竜が滞在しているフェルビアの砦へ向かわせるんだ!! 飛竜が飛び立つ前には、何とかセレスティアに追いつくんだ!!」
「人の話を聞いてくれ!!」
イゼルは、王太子殿下である私の話など聞いておらずに、セレスティアを連れ戻す指示を騎士たちへと出していた。
◇
「まぁ、ヴェイグ様。この焼き立てパイは、なかなか美味しいですわ。街にはこんなものがあるんですね」
「俺にもひと口」
「顔を近づけないで下さい」
馬をゆっくりと走らせながら、ヴェイグ様が買ってくれたパイを齧っていると背後に密着しているヴェイグ様の顔が近づいてきて、恥ずかしくなる。
「……ひ、ひと口ですよ。ひと口!」
上ずった声で返事をして、ヴェイグ様にパイを近づけると、パクリとパイを囓られた。
「……甘い」
「……そ、そうですか」
甘い仕草に照れてしまう。
ヴェイグ様の筋肉質な腕の中で、照れるのを隠すようにツンとした。
聖女機関のイゼルの執務室。セレスティアを連れ戻したのかと思いきや、イゼルは憤慨しているままだった。焦っているようにも見える。
「セレスティアがいない!?」
「すでに出立してしまってました! シュタルベルグ国に開放している離宮に残っているのは荷物運びなどの後発部隊だけです!!」
「いったいどこに……」
「シュタルベルグ国ですよ!! 早く連れ戻さないと、手が出せなくなります!!」
まるで駆け落ちのように、あっという間にいなくなってしまったセレスティアと王弟殿下ヴェイグ。
婚約者と言う理由で幼い頃からセレスティアを城で迎えていたが……行く場所などなかったはずだった。
だから、婚約破棄をすれば縋ってくると思っていた。でも、腹立たしいほど憎まれ口しか叩かないセレスティア。……どうして、いつも思い通りにならないのか。
しかも、突然現れたシュタルベルグ国の王弟殿下ヴェイグが連れて行ってしまった。
聖女機関にも姿をあらわさないままで。
セレスティアの黒髪が出現したあたりから、聖女たちはセレスティアを不気味がっていた。
当然だ。光のシードに選ばれるのは、光の聖女なのだから。それが、黒髪が出現した聖女など聞いたこともない。黒髪が薄く金色になる聖女がいたことすらあると言うものなのに……。あの黒髪だけは、誰も説明ができない。
セレスティアでさえ理由はわからないと言い、話しすら続かなかった。
それなのに、イゼルはセレスティアのことで私を責め立てている。
「どうして、すぐに連れ戻さなかったのです!」
「そんなことをすれば、私がセレスティアを迎えに行くみたいではないか!」
「当然です!! いったい何をやっておられるのです……!!」
いつセレスティアと王弟殿下ヴェイグの二人が出会ったのか。セレスティアが部屋で魔法の練習をしていたなど、信じられない。
セレスティアは、そんな練習をするような聖女ではなかった。
能力も高かった。でも、それがいつしか黒髪が出現した。
「光の祝祭も近いのに……」
「それなら、私はエリーゼを推薦しよう。光の祝祭はエリーゼで進めるんだ」
「何故、エリーゼなのです。エリーゼは、セレスティアのような能力はありません」
「そんなことはない」
エリーゼのおかげで、今まで誰にも気づかれずに逢引きができたんだ。セレスティアほどの能力の高さはなくてもエリーゼもそれなりに高いはず。大丈夫だ。
それなのに……。
「すぐに早馬を出すんだ!! シュタルベルグ国の飛竜が滞在しているフェルビアの砦へ向かわせるんだ!! 飛竜が飛び立つ前には、何とかセレスティアに追いつくんだ!!」
「人の話を聞いてくれ!!」
イゼルは、王太子殿下である私の話など聞いておらずに、セレスティアを連れ戻す指示を騎士たちへと出していた。
◇
「まぁ、ヴェイグ様。この焼き立てパイは、なかなか美味しいですわ。街にはこんなものがあるんですね」
「俺にもひと口」
「顔を近づけないで下さい」
馬をゆっくりと走らせながら、ヴェイグ様が買ってくれたパイを齧っていると背後に密着しているヴェイグ様の顔が近づいてきて、恥ずかしくなる。
「……ひ、ひと口ですよ。ひと口!」
上ずった声で返事をして、ヴェイグ様にパイを近づけると、パクリとパイを囓られた。
「……甘い」
「……そ、そうですか」
甘い仕草に照れてしまう。
ヴェイグ様の筋肉質な腕の中で、照れるのを隠すようにツンとした。