光の聖女は闇属性の王弟殿下と逃亡しました。

第十六話 追いついた聖騎士

疲れて眠ってしまい、気がつけば朝になっていた。そして、隣には寝ている私を後ろから抱き寄せているヴェイグ様。逃亡してから、毎晩この姿勢で寝るのはどうかと思う。

そして、まったくなれないままで、目が覚めるたびに恥ずかしくなっている。

身体を起こすと、ヴェイグ様も起き上がり膝を立てて私をじっと見た。



「……ヴェイグ様」

「なんだ?」

「何度も言いますが、一緒に寝ないでください」

「俺も何度も言うが、一緒に寝ないと側にいられないだろう。覗き見の魔法で覗かれるぞ。だいたい、ズボンはどうした? 一緒に貸したはずだろう?」

「大きすぎて着れませんでした!」



顔を真っ赤にしてツンとして言った。



私のシャツだけの姿にヴェイグ様が、喉を鳴らして笑う。

シャツだけでも、膝近くまであるから大事なところは見られてないけど……。



「……ヴェイグ様。昨夜は、湯浴みをさせて下さってありがとうございます。でも、アベルはいいのですか? お仕事でしたら、私にかまわなくて大丈夫ですよ」

「要件は昨夜のうちに伝えた。シオンたちが到着すれば、すぐにシュタルベルグ国に出立するから、セレスティアもそのつもりでいてくれ」

「はい」

「朝食はすぐに食べられる。すぐに着替えろ。それとも、そのままでいるか?」

「すぐに着替えます!」



そして、また着てきたドレスに急いで着替えて、部屋をでると食堂には朝食が用意されており、早速ヴェイグ様と一緒に食事を始めた。



もうすぐで、カレディア国を出られる。婚約破棄をマティアス殿下からされたことは予定と少々違うけど、結果的には婚約破棄はできた。それに、カレディア国を離れられる。

それにどこかホッとしている。



「……お茶は美味しいか?」

「はい……美味しいです」

「それは、良かった」



そう言って、ヴェイグ様がお茶を飲み終わると、足を組みなおす。足さえも長くて、座っているだけで絵になるような人だ。



優しい王弟殿下だと思う。手が早いのさえなければ、良かった。



「セレスティア。先ほど、シオンたちが到着した。少し休ませているが……少し休めば、全員ですぐにシュタルベルグ国に出立する」

「はい。シオンたちも、無事で良かったです」



食事もしないで寝ていたうちに、シオンたちも無事に到着していたらしい。彼らは今、ヴェイグ様が少し休ませているという。

何事もなくて、ホッとしてサンドイッチを齧っていた。



「カレディア国は、シュタルベルグ国に逆らうことはできないからな……そうそう、カレディア国は手は出せないが……セレスティアは、気を付けた方がいい」

「はい……」



力関係では、明らかに大国シュタルベルグ国が上だ。シュタルベルグ国の竜騎士団は、誰にも落とせないと言うほど有名だった。



「では、食事も終わったことだし、飛竜を見に行くぞ」

「はい……飛竜はカレディア国にはいないので、緊張します」

「なかなか可愛いものだ。セレスティアも気に入る」



そう言って、食事が終われば自然と私の手を差し出して、席から立たせてくれた。

飛竜がいるという、中庭へと向かおうとすると、フェルビアの砦に置いている門番たちが騒がしくなっていた。そこには、カレディア国の聖騎士たちが押し寄せている。

その中には、ロクサスの姿もあった。



「ヴェイグ様……聖騎士たちが……」

「……追ってが、こんなに早く到着するとは……」

「緊急用の連絡を使ったのです……」



間違いない。アルディラの街にいたロクサスがここに私を迎えに来たということは、イゼル様が緊急用の連絡をするためのシード(魔法の核)を使ったのだ。



「アベル! 全員飛竜に乗せろ!! 今すぐに砦から離脱する!!」

「ハッ!!」



アベルが急いで動き出すと、砦中のシュタルベルグ国の人間が動き出した。



「ヴェイグ様。どこに行くのですか?」

「門番を下げる」



フェルビアの砦を最後に、ヴェイグ様はカレディア国にシュタルベルグ国の人間を一人も置いて行かないのだ。



「セレスティアは、アベルたちと飛竜のところに行け」

「でも、私のせいです。それにヴェイグ様が一緒にいてくださると言いました」

「そうだったな……悪い。守ると言ったのに……」

「約束は守ってくださっていますよ。ここまで来られたのは、ヴェイグ様のおかげです」

「では、約束通りシュタルベルグ国に連れて行く。楽しみにしてろ」

「はい。また、あのお茶を飲ませてくださいね」

「最高のお茶を用意してやろう」



ヴェイグ様が笑顔でいうと、私もにこりと返した、そして、フェルビアの砦の出入り口へ行った。









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