光の聖女は闇属性の王弟殿下と逃亡しました。
第十八話 ドラゴニアンシード(竜の核)
ヴェイグ様が飛竜で一気に空へ上昇した。飛竜は一定の間隔を保って空を飛んでいる。
真っ暗な闇の帳を呆然と飛竜から見下ろせば、視線を移した私の黒髪をヴェイグ様が撫でる。
「セレスティア……大丈夫だ。怖がる必要はない」
「はい……ヴェイグ様は、私が……闇を怖がっていることに気付いていたんですね……」
「……確信はなかった」
それはウソだ。ヴェイグ様は、いつも私の黒髪を慈しんでいた。
ヴェイグ様の腕の中が、心地よかった。誰もこの容姿を受け入れることなどないのに、彼だけは違う。
「ヴェイグ様は、闇魔法を使うのですね……闇に侵されないのですか?」
闇魔法は珍しい。闇を纏う魔法は精神を侵されやすく、身体にも侵食することがあるのだ。
だから、闇魔法使いはそうそう育たない。
闇魔法に侵されないままなのは、稀なのだ。
「そうだな……俺の生まれつき持っているシード(魔法の核)が少し特別なだけだ」
「普通のシード(魔法の核)とは違うのですか?」
「違う……俺が持っているのは、竜の叡智と呼ばれるドラゴニアンシード(竜の核)だ」
「あれは貴重なもので……」
ドラゴニアンシード(竜の核)は、ほとんどない。私も見たことすらない。
「……だがシュタルベルグ国が竜の国と呼ばれていることを知っているだろう?」
「知っています。シュタルベルグ国の王族は、竜の血を引いていると聞いたことがあります」
「その中でも、ドラゴニアンシード(竜の核)を持って生まれる者がいる。俺がそうだ」
竜の叡智と呼ばれるドラゴニアンシード(竜の核)は珍しい。高い能力を有していると聞いたことがある。シュタルベルグ国の竜の血を引く王族でも、必ず持って生まれるとは限らないという。
そのせいで、逃亡中に出くわした羽竜の吐いた黒炎も大丈夫だったのだろうか。
もしそうなら……。
「……だから、闇も平気なのですか?」
「そうだな……ドラゴニアンシード(竜の核)でも、俺のは黒竜だ。闇に飲まれることはない。だから、遠慮なく頼ればいい」
「ヴェイグ様は、私の反対で闇属性なのですね……」
「俺が怖いか?」
「そんなことは……」
「なら、もう少しこのままでいてもいいか?」
「はい……そうしてください」
あの闇が怖い。でも、ヴェイグ様の側は不思議な気分になる。私を一度も否定しないからかもしれない……。
今も私を大事に包んでくれている。飛竜が風を切って空を進んでいるせいで、身体の熱を奪っていくけど、ヴェイグ様にマントで包まれているせいか、寒さも大丈夫だと思える。
「ヴェイグ様! ご無事で!」
「お前たちも無事で良かった。このまま、予定通りブリンガーの邸へ行く」
「ハッ!」
ヴェイグ様の無事を確認すると、アベルは私たちを守っているように囲まれている飛竜の陣形へと戻っていく。
「ヴェイグ様。シュタルベルグ国の王城へ行くのではないですか?」
「王城は一日では着かん。それに急いで帰る用もない」
「仕事で来たのにですか?」
「少し休んでから帰るだけだ……一ヶ月くらい休むか?」
「仕事をそんなに休んでどうするんですか……」
いったい何を考えているのでしょう。でも……。
「少し楽しみです。カレディア国から出ることはそうなかったので……」
「きっと気に入る」
そのまま、ヴェイグ様率いる竜騎士団に囲まれたままで、私たちはカレディア国から逃亡した。
真っ暗な闇の帳を呆然と飛竜から見下ろせば、視線を移した私の黒髪をヴェイグ様が撫でる。
「セレスティア……大丈夫だ。怖がる必要はない」
「はい……ヴェイグ様は、私が……闇を怖がっていることに気付いていたんですね……」
「……確信はなかった」
それはウソだ。ヴェイグ様は、いつも私の黒髪を慈しんでいた。
ヴェイグ様の腕の中が、心地よかった。誰もこの容姿を受け入れることなどないのに、彼だけは違う。
「ヴェイグ様は、闇魔法を使うのですね……闇に侵されないのですか?」
闇魔法は珍しい。闇を纏う魔法は精神を侵されやすく、身体にも侵食することがあるのだ。
だから、闇魔法使いはそうそう育たない。
闇魔法に侵されないままなのは、稀なのだ。
「そうだな……俺の生まれつき持っているシード(魔法の核)が少し特別なだけだ」
「普通のシード(魔法の核)とは違うのですか?」
「違う……俺が持っているのは、竜の叡智と呼ばれるドラゴニアンシード(竜の核)だ」
「あれは貴重なもので……」
ドラゴニアンシード(竜の核)は、ほとんどない。私も見たことすらない。
「……だがシュタルベルグ国が竜の国と呼ばれていることを知っているだろう?」
「知っています。シュタルベルグ国の王族は、竜の血を引いていると聞いたことがあります」
「その中でも、ドラゴニアンシード(竜の核)を持って生まれる者がいる。俺がそうだ」
竜の叡智と呼ばれるドラゴニアンシード(竜の核)は珍しい。高い能力を有していると聞いたことがある。シュタルベルグ国の竜の血を引く王族でも、必ず持って生まれるとは限らないという。
そのせいで、逃亡中に出くわした羽竜の吐いた黒炎も大丈夫だったのだろうか。
もしそうなら……。
「……だから、闇も平気なのですか?」
「そうだな……ドラゴニアンシード(竜の核)でも、俺のは黒竜だ。闇に飲まれることはない。だから、遠慮なく頼ればいい」
「ヴェイグ様は、私の反対で闇属性なのですね……」
「俺が怖いか?」
「そんなことは……」
「なら、もう少しこのままでいてもいいか?」
「はい……そうしてください」
あの闇が怖い。でも、ヴェイグ様の側は不思議な気分になる。私を一度も否定しないからかもしれない……。
今も私を大事に包んでくれている。飛竜が風を切って空を進んでいるせいで、身体の熱を奪っていくけど、ヴェイグ様にマントで包まれているせいか、寒さも大丈夫だと思える。
「ヴェイグ様! ご無事で!」
「お前たちも無事で良かった。このまま、予定通りブリンガーの邸へ行く」
「ハッ!」
ヴェイグ様の無事を確認すると、アベルは私たちを守っているように囲まれている飛竜の陣形へと戻っていく。
「ヴェイグ様。シュタルベルグ国の王城へ行くのではないですか?」
「王城は一日では着かん。それに急いで帰る用もない」
「仕事で来たのにですか?」
「少し休んでから帰るだけだ……一ヶ月くらい休むか?」
「仕事をそんなに休んでどうするんですか……」
いったい何を考えているのでしょう。でも……。
「少し楽しみです。カレディア国から出ることはそうなかったので……」
「きっと気に入る」
そのまま、ヴェイグ様率いる竜騎士団に囲まれたままで、私たちはカレディア国から逃亡した。