光の聖女は闇属性の王弟殿下と逃亡しました。
第十九話 聖騎士ロクサス
__いったいどういうことだ。
婚約破棄? 聖女を解任?
理由がわからず困惑したままで、フェルビアの砦の外廊下に立っていた。
「ロクサス様。辺りの闇は払いました」
部下の聖騎士の一人が、そう報告に来た。
シュタルベルグ国の王弟殿下ヴェイグという男が放った闇を払うと、フェルビアの砦には、誰一人いなかった。
「……時間稼ぎだ」
「ロクサス様?」
聖騎士たちがフェルビアの砦を捜索しているが、やはり何も見つからない。
シュタルベルグ国の王弟殿下ヴェイグが俺たちの前にセレスティアを連れて姿を現し、門番を下げたのは時間稼ぎだった。
しかも、飛竜で逃げられたら、俺たちには追いつく術もない。
セレスティアは、王弟殿下ヴェイグに抱きついてそのまま行ってしまった。
__負けた。
あの王弟殿下ヴェイグという初対面の男に負けたのだ。
王弟殿下ヴェイグの闇に包まれて追うこともできずに、セレスティアを取り返すこともできずに彼女はついて行ってしまった。
時間稼ぎをされていることすら気付かなかった。
婚約破棄? ふざけるなよ。セレスティアに何の落ち度があると言うのだ。
聖女解任など、到底信じられない。
誰よりも強い能力を有し、意味不明な黒髪が出現してもその能力は落ちることはなかった。
何もかもが腹立たしい。
「……帰還だ。すぐに聖女機関へ帰還する!!」