光の聖女は闇属性の王弟殿下と逃亡しました。

第二十一話 灯火ぐらいでは

セレスティアが王弟殿下ヴェイグと城を出てから、幾日も立っている。



祝祭で披露目に出す光のシードを模したシード(魔法の核)は、聖女が造る。

そのシード(魔法の核)を造っていたのはセレスティア。彼女が大聖女候補だったからだ。

この光の祝祭で成功を治め、大聖女になり王太子殿下である私との結婚に入るはずだった。



「それなのに……っ!! エリーゼは、どうだ!?」

「それが……セレスティア様のようにはいかなくて……聖女機関はお怒りです」



王太子殿下の執務室にいる側近のエルドまでもが、呆れ顔で冷ややかな視線を私に向けてため息交じりで言った。



出来上がっていたと思っていた光のシード(魔法の核)は未だ完成してなくて、婚約者にしようとしているエリーゼを推薦した。

それなのに、セレスティアの続きをさせても進まない。



「光の祝祭には、聖女が造り上げた光のシード(魔法の核)に、聖女が光を灯す役目があるんだぞ!!」

「それが、上手くいかないようです……エリーゼ様は、セレスティア様のように能力が高くありませんので……」

「まったく光を灯せないわけではないのだろう!!」

「そんな力いっぱい言われても……」

「はっきり言うんだ!」

「灯火ぐらいなら……」

「灯火で祝祭を祝えるか!!」

「そう思うのでしたら、セレスティア様をお連れ下さい。陛下も未だにお怒りですよ」



陛下である父上には、セレスティアとの婚約破棄に聖女解任したことをこっぴどくしかられた。イゼルと同じように、せめて聖女に戻すのだと……だから、父上に言った。



エリーゼがセレスティアの代わりになるのだと……エリーゼも聖女なのだから、問題はないはずだった。



「マティアス殿下……聖女にも、能力の差はあるのです。エリーゼ様では、セレスティア様と同じ聖女の肩書に貴族だと言うだけでは、代わりが務まるとは……」

「……何とかしてみせる。すぐにエリーゼのところに行く」

「他国の貴族や王族も参加するのですよ。光の祝祭は我が国の威厳を示すためのものでもあるのです」

「だから、エリーゼには、灯火ぐらいではダメなのだ! すぐにエリーゼの能力を上げるんだ!!」

「そんな無茶な……」

「どうしてもダメなら、セレスティアを……!」



イゼルたちのように連れ戻さなくてはならない。このままでは、私の地位も危うくなってしまう気がしてきている。



とにかく、エリーゼを何とかしないと結婚どころではない。それどころか祝祭自体が危ぶまれてしまう。セレスティアを影武者にしようとしたのに……!



焦る気持ちで側近のエルドと一緒に、エリーゼのいる聖女機関のシード(魔法の核)を造っている場所へと向かった。











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