光の聖女は闇属性の王弟殿下と逃亡しました。
第二十二話 落ち着かない聖女機関
聖女機関の中庭には、決められた人間しか入れないシード(魔法の核)を造る場所がある。
緑豊かな場所の周りには、シード(魔法の核)を作るために、清浄なシード(魔法の核)や魔力を混入するシード(魔法の核)など、シード(魔法の核)造りに必要な紋の刻まれたシード(魔法の核)が植えられていた。
その中でも、特別な場所で光のシード(魔法の核)を模したものを造っている。
そこでは、必死で聖力をシード(魔法の核)に注いでいるエリーゼ。その後ろでは、イゼルが恐ろしい顔で立っていた。
エリーゼに「どうだ?」と聞こうと近づくと、イゼルがエリーゼに近づいた私にいきなり叫んだ。
「マティアス殿下! 早くセレスティアを連れ戻してください!!」
聖女機関の責任者であるイゼルは憤慨しているままだった。
白い髭を生やしたイゼルは初老の公爵。すでに実戦は引いているが、彼も光のシード(魔法の核)に選ばれた聖騎士の一人だった。聖女機関のシード(魔法の核)を造っている寝殿造りの部屋で彼の声が響いている。
「うるさい! お前たちだって、セレスティアの聖女の資質を疑っていたではないか!」
「確かに光の聖女ではないかもと、疑わしいところはありましたが……勝手に王太子殿下の権限でセレスティアを解任するなど言語道断です!! ……ましてや、光の祝祭を控えているこの大事な時期になど……!」
「大丈夫だ。エリーゼなら、代わりが務まるはずだ。彼女も聖女だろう?」
「できるわけないでしょう。エリーゼは、聖女の能力が低いのですよ……今も、聖力の使い過ぎで、殿下の後ろで倒れているではありませんか……」
後ろを振り向くと、音もなく倒れているエリーゼ。
ほんの一瞬目を離しただけだぞ!!
イゼルに怒鳴られて、エリーゼからイゼルの方を向いただけの瞬間で!!
「クッ……エリーゼを起こせ!!」
困ったようにエルドが、ばったりと倒れているエリーゼを起こすと、ハッとしたようにエリーゼが目を覚ます。
なぜ、何か月もやってないのに、倒れるほど聖力が尽きるんだ!!
「エリーゼ……もっと真面目にやれ! 祝祭が近いんだぞ!!」
「……マティアス様……ひどいです! 私だって精一杯やっていますわ! でも、いきなり光のシード(魔法の核)など造れません!!」
「光のシード(魔法の核)は祝祭には欠かせないものだぞ!」
聖女が光を灯し、それを聖騎士が聖なる力を使って割る。それが、光の祝祭で配られることになっている。
代々我が国に伝わる光のシード(魔法の核)とは違うが、それを模したものを聖女が造るのは、祝祭には必要なものだった。
「聖獣様の光のシード(魔法の核)を造れと言っているんじゃないんだ。何とかやってくれ。これでは、結婚など無理だ!!」
「酷いですわ……」
わぁっと顔を覆って、エリーゼが飛び出していこうとする。
「待て! エリーゼ!! どこに行く!!」
「今日はもう無理です!!」
そう泣き叫んでエリーゼが飛び出していった。
「……マティアス殿下。エリーゼは、ほっといてください。あれがいても何の役にも立ちません。彼女は感知能力だけが少し高いぐらいなのです。必要なのは、セレスティアです。彼女はこれを一人で造っていたのですよ。ここまでの完成しているので、最悪、光のシード(魔法の核)はこれでいいとしても、光を灯すのはエリーゼでは到底無理です。あんな灯火で国民が納得するはずがないでしょう……」
感知能力だけが、少しだけ高い。いったいそれが何の役に立つと言うのか……いや、そのおかげで今までエリーゼとの逢瀬を誰にもバレることがなかったのだが。役に立っているのか、立ってないのか全く分からなくなってきた。
「いったいどうしたら……」
「ですから、セレスティアを連れ戻してください!! あれは、放置できないのですよ!!」
「セレスティアだって、普通の聖女と同じだろう!!」
「……私からは、もう何も言えません……」
含みがあるように口を閉ざしたイゼル。セレスティアがいったい何だと言うのか……。
「それと、もう一つ気になることができました」
「なんだ?」
これ以上何を言いたいのだと思えば、返事に力が入り無愛想になってしまう。
「エリーゼのことです。今、『結婚など無理だ』とおっしゃいましたが……どういう意味ですかな? 私の空耳だと良いのですが……」
嫌な予感がするように、おそるおそる頭を抱えたイゼルが聞いてくる。
「……実は、エリーゼと結婚しようと考えていたが……」
「まさか……エリーゼと……」
細いしわだらけの細い目を大きく見開いて驚いているイゼルから、言いにくくてそっと目を反らした。
エリーゼのあの様子では、結婚に結びつかない気がしてきている。セレスティアの続きとはいえ、光のシード(魔法の核)を造る役目を与えれば、自信満々で引き受けたのに、今では毎日密かに逢瀬をすることすらできないほど、エリーゼに余裕がなくなっているのだ。
「……っ殿下……何をやっておられるのですかーー!!」
青筋を立ててイゼルが叫ぶ。
「まさか、セレスティアと婚約破棄をしたのは、エリーゼとの浮気ですか!!」
「違う!! セレスティアは、シュタルベルグ国の王弟殿下ヴェイグと抱き合っていたんだ!! セレスティアの部屋の側に控えていた近衛騎士たちも大勢目撃している!!」
「確かに、セレスティアの部屋で、いつ来たのかわからない王弟殿下ヴェイグ殿と絡み合っていたというような報告は受けましたが……だからと言って……っ」
イゼルが、今にも倒れそうな様相で説教を始めた。なぜ、王弟殿下ヴェイグと浮気して駆け落ちのようにいなくなってしまったセレスティアのせいで、私は毎日説教されるのだろうか。
「それは、本当ですか? セレスティアが……」
その時に、聖騎士ロクサスが驚き呟きながら静かにやって来た。
緑豊かな場所の周りには、シード(魔法の核)を作るために、清浄なシード(魔法の核)や魔力を混入するシード(魔法の核)など、シード(魔法の核)造りに必要な紋の刻まれたシード(魔法の核)が植えられていた。
その中でも、特別な場所で光のシード(魔法の核)を模したものを造っている。
そこでは、必死で聖力をシード(魔法の核)に注いでいるエリーゼ。その後ろでは、イゼルが恐ろしい顔で立っていた。
エリーゼに「どうだ?」と聞こうと近づくと、イゼルがエリーゼに近づいた私にいきなり叫んだ。
「マティアス殿下! 早くセレスティアを連れ戻してください!!」
聖女機関の責任者であるイゼルは憤慨しているままだった。
白い髭を生やしたイゼルは初老の公爵。すでに実戦は引いているが、彼も光のシード(魔法の核)に選ばれた聖騎士の一人だった。聖女機関のシード(魔法の核)を造っている寝殿造りの部屋で彼の声が響いている。
「うるさい! お前たちだって、セレスティアの聖女の資質を疑っていたではないか!」
「確かに光の聖女ではないかもと、疑わしいところはありましたが……勝手に王太子殿下の権限でセレスティアを解任するなど言語道断です!! ……ましてや、光の祝祭を控えているこの大事な時期になど……!」
「大丈夫だ。エリーゼなら、代わりが務まるはずだ。彼女も聖女だろう?」
「できるわけないでしょう。エリーゼは、聖女の能力が低いのですよ……今も、聖力の使い過ぎで、殿下の後ろで倒れているではありませんか……」
後ろを振り向くと、音もなく倒れているエリーゼ。
ほんの一瞬目を離しただけだぞ!!
イゼルに怒鳴られて、エリーゼからイゼルの方を向いただけの瞬間で!!
「クッ……エリーゼを起こせ!!」
困ったようにエルドが、ばったりと倒れているエリーゼを起こすと、ハッとしたようにエリーゼが目を覚ます。
なぜ、何か月もやってないのに、倒れるほど聖力が尽きるんだ!!
「エリーゼ……もっと真面目にやれ! 祝祭が近いんだぞ!!」
「……マティアス様……ひどいです! 私だって精一杯やっていますわ! でも、いきなり光のシード(魔法の核)など造れません!!」
「光のシード(魔法の核)は祝祭には欠かせないものだぞ!」
聖女が光を灯し、それを聖騎士が聖なる力を使って割る。それが、光の祝祭で配られることになっている。
代々我が国に伝わる光のシード(魔法の核)とは違うが、それを模したものを聖女が造るのは、祝祭には必要なものだった。
「聖獣様の光のシード(魔法の核)を造れと言っているんじゃないんだ。何とかやってくれ。これでは、結婚など無理だ!!」
「酷いですわ……」
わぁっと顔を覆って、エリーゼが飛び出していこうとする。
「待て! エリーゼ!! どこに行く!!」
「今日はもう無理です!!」
そう泣き叫んでエリーゼが飛び出していった。
「……マティアス殿下。エリーゼは、ほっといてください。あれがいても何の役にも立ちません。彼女は感知能力だけが少し高いぐらいなのです。必要なのは、セレスティアです。彼女はこれを一人で造っていたのですよ。ここまでの完成しているので、最悪、光のシード(魔法の核)はこれでいいとしても、光を灯すのはエリーゼでは到底無理です。あんな灯火で国民が納得するはずがないでしょう……」
感知能力だけが、少しだけ高い。いったいそれが何の役に立つと言うのか……いや、そのおかげで今までエリーゼとの逢瀬を誰にもバレることがなかったのだが。役に立っているのか、立ってないのか全く分からなくなってきた。
「いったいどうしたら……」
「ですから、セレスティアを連れ戻してください!! あれは、放置できないのですよ!!」
「セレスティアだって、普通の聖女と同じだろう!!」
「……私からは、もう何も言えません……」
含みがあるように口を閉ざしたイゼル。セレスティアがいったい何だと言うのか……。
「それと、もう一つ気になることができました」
「なんだ?」
これ以上何を言いたいのだと思えば、返事に力が入り無愛想になってしまう。
「エリーゼのことです。今、『結婚など無理だ』とおっしゃいましたが……どういう意味ですかな? 私の空耳だと良いのですが……」
嫌な予感がするように、おそるおそる頭を抱えたイゼルが聞いてくる。
「……実は、エリーゼと結婚しようと考えていたが……」
「まさか……エリーゼと……」
細いしわだらけの細い目を大きく見開いて驚いているイゼルから、言いにくくてそっと目を反らした。
エリーゼのあの様子では、結婚に結びつかない気がしてきている。セレスティアの続きとはいえ、光のシード(魔法の核)を造る役目を与えれば、自信満々で引き受けたのに、今では毎日密かに逢瀬をすることすらできないほど、エリーゼに余裕がなくなっているのだ。
「……っ殿下……何をやっておられるのですかーー!!」
青筋を立ててイゼルが叫ぶ。
「まさか、セレスティアと婚約破棄をしたのは、エリーゼとの浮気ですか!!」
「違う!! セレスティアは、シュタルベルグ国の王弟殿下ヴェイグと抱き合っていたんだ!! セレスティアの部屋の側に控えていた近衛騎士たちも大勢目撃している!!」
「確かに、セレスティアの部屋で、いつ来たのかわからない王弟殿下ヴェイグ殿と絡み合っていたというような報告は受けましたが……だからと言って……っ」
イゼルが、今にも倒れそうな様相で説教を始めた。なぜ、王弟殿下ヴェイグと浮気して駆け落ちのようにいなくなってしまったセレスティアのせいで、私は毎日説教されるのだろうか。
「それは、本当ですか? セレスティアが……」
その時に、聖騎士ロクサスが驚き呟きながら静かにやって来た。