光の聖女は闇属性の王弟殿下と逃亡しました。
第二十三話 穏やかな一時
「__本当に便利なシード(魔法の核)だな」
ブリンガーの邸の屋根の上で辺りを見回していた。
探索のシードのおかげで、周りの気配がわかる。どこに誰がいるのかもわかりやすくなったし、盗み聞きすら、いとも簡単に出来てしまう。
それに……探していた物の居場所が判明した。
思わずククッと笑いが零れる。
いくら、カレディア国の王太子殿下とはいえ、シュタルベルグ国の方がはるかに大国だった。
そんな大国になど、早々に簡単に踏み込めるわけがない。
次に会うのは、正式にシュタルベルグ国に訪問する時か……そう思えば、すぐに王城に帰る必要もない。
「セレスティアは、絶対に返さないからな……」
__やっと手に入れた。誰が返すものか。
そして、屋根から飛び降りて一階の部屋に戻ると、セレスティアは必死でパズルと睨めっこしていた。
「……楽しいか?」
「邪魔しないでください。今いいところです」
眉間にシワを寄せてパズルをしているセレスティアの後ろに椅子を持ってきて座ると、背中からも必死さが伺えた。
「茶でも持ってこさせるか?」
「そうですね。ヴェイグ様がお帰りになれば一緒に頂くと言いましたから、すぐに準備してくださると思いますよ」
背を向けたままで、セレスティアがパズルをはめながら言う。
「ああ、待っていてくれたのか?」
「……お茶にしますか? シオンに伝えましょうか?」
「パズルは? 待つぞ」
「夜の楽しみに取っておきます」
「では、庭で茶でもいただくか? シオンなら、俺がこの部屋に来たことに気付いているから、すぐにお茶も準備するだろう」
「はい」
そう言って、手を差し出すと、立ち上がったセレスティアがそっと手に乗せてくれた。