光の聖女は闇属性の王弟殿下と逃亡しました。
第二十七話 朝が来る前にプチ逃亡
ヴェイグ様に連れられて、急いで飛竜に乗せられた。そして、まだ日が上がりきってない薄暗い白んだ空をシュタルベルグ国の王城へ向けて飛んでいた。
「ヴェイグ様と知り合ってから、逃亡が続いている気がします」
「俺だって、ブリンガーの邸では、しばらく休むつもりだったんだよ」
「……私たちが朝食の時間にいなかったら、リリノア様は驚きますよ」
「邪魔されたくないんだよ……誰も邸に呼ぶ気はなかったのに……」
最後の言葉をぼやくように、ヴェイグ様が不機嫌を滲ませて言った。
「ヴェイグ様とリリノア様は、仲良しかと思ったのですけど……」
「……嫌っているわけではない。リリノアは、父親と上手くいってないから、俺を頼ってきているだけだろう」
「可愛らしいご令嬢でしたのに……」
家族に愛されていそうな感じだった。ヴェイグ様のことも好きそうに見えたけど……。
「父親のシュレイダ公爵は、厳しい方だ。リリノアは、シード(魔法の核)持ちで生まれたにも関わらず、あまり勉強も魔法も得意ではなくてだな……劣等感があるんだよ」
「魔法が?」
「水属性の魔法を使うのだが、あまり上手くない……だから、魔法が上手く使えなくて仕方なく魔法薬を習わせれば、そちらも中々進まずに、結局諦めて普通の令嬢のように結婚を勧めていていたんだよ……」
「それで、ヴェイグ様に白羽の矢が立ったと?」
「……そういうことだ」
魔法が上手く使えない。確か、シュタルベルグ国には聖女と呼ばれる人間がほとんどおらず、シード(魔法の核)を埋め込む者も少ないと聞いたことがある。元々生まれ持ったシード(魔法の核)がないと魔法が使えないのだ。私たち聖女のように光魔法を使える人間すらいない。
「……くしゅんっ……」
「ああ、寒いか。空は地上と気温が少し違うからな……」
ヴェイグ様が寒さから庇うようにさらにマントの中に私を寄せた。
「……王城に帰還すれば、兄上に婚約を伝える」
「……私は、聖女でも異物です。きっと婚約はお認めにならないと思いますよ」
「聖女でなくてもいい。だから、好きになってくれないか?」
「私は、聖女じゃなくてもいいのですか?」
聖女でもない私に価値はあるのだろうか。
「……どちらでもいい。聖女を否定する気もないが……聖女でもそうでなくても、好きなのはセレスティアだけだ。それは変わらない」
何と返事をしていいのかわからない。でも、ヴェイグ様は私に聖女を求めてない。そんな煮え切らない私の頭にヴェイグ様が下顎を乗せた。
「今は、俺のことだけを考えていて欲しい」
「そうですね……私を逃がしてくださったので、少し考えてみます」
「そうしてくれ」
私を支えているヴェイグ様の腕に手を添えると、彼は払うこともない。その腕に少しだけ頬が紅潮した顔を見られないように埋めた。
「ヴェイグ様と知り合ってから、逃亡が続いている気がします」
「俺だって、ブリンガーの邸では、しばらく休むつもりだったんだよ」
「……私たちが朝食の時間にいなかったら、リリノア様は驚きますよ」
「邪魔されたくないんだよ……誰も邸に呼ぶ気はなかったのに……」
最後の言葉をぼやくように、ヴェイグ様が不機嫌を滲ませて言った。
「ヴェイグ様とリリノア様は、仲良しかと思ったのですけど……」
「……嫌っているわけではない。リリノアは、父親と上手くいってないから、俺を頼ってきているだけだろう」
「可愛らしいご令嬢でしたのに……」
家族に愛されていそうな感じだった。ヴェイグ様のことも好きそうに見えたけど……。
「父親のシュレイダ公爵は、厳しい方だ。リリノアは、シード(魔法の核)持ちで生まれたにも関わらず、あまり勉強も魔法も得意ではなくてだな……劣等感があるんだよ」
「魔法が?」
「水属性の魔法を使うのだが、あまり上手くない……だから、魔法が上手く使えなくて仕方なく魔法薬を習わせれば、そちらも中々進まずに、結局諦めて普通の令嬢のように結婚を勧めていていたんだよ……」
「それで、ヴェイグ様に白羽の矢が立ったと?」
「……そういうことだ」
魔法が上手く使えない。確か、シュタルベルグ国には聖女と呼ばれる人間がほとんどおらず、シード(魔法の核)を埋め込む者も少ないと聞いたことがある。元々生まれ持ったシード(魔法の核)がないと魔法が使えないのだ。私たち聖女のように光魔法を使える人間すらいない。
「……くしゅんっ……」
「ああ、寒いか。空は地上と気温が少し違うからな……」
ヴェイグ様が寒さから庇うようにさらにマントの中に私を寄せた。
「……王城に帰還すれば、兄上に婚約を伝える」
「……私は、聖女でも異物です。きっと婚約はお認めにならないと思いますよ」
「聖女でなくてもいい。だから、好きになってくれないか?」
「私は、聖女じゃなくてもいいのですか?」
聖女でもない私に価値はあるのだろうか。
「……どちらでもいい。聖女を否定する気もないが……聖女でもそうでなくても、好きなのはセレスティアだけだ。それは変わらない」
何と返事をしていいのかわからない。でも、ヴェイグ様は私に聖女を求めてない。そんな煮え切らない私の頭にヴェイグ様が下顎を乗せた。
「今は、俺のことだけを考えていて欲しい」
「そうですね……私を逃がしてくださったので、少し考えてみます」
「そうしてくれ」
私を支えているヴェイグ様の腕に手を添えると、彼は払うこともない。その腕に少しだけ頬が紅潮した顔を見られないように埋めた。