光の聖女は闇属性の王弟殿下と逃亡しました。
第九話 逃亡中
__翌朝。森の中は寒くて、身体が震えた。
温もりを欲して身体を丸めると、違和感に気付いた。私がヴェイグ様の腕の中にいる。
そう言えば、昨夜は食事の後に馬車は騎士たちがどこかへと持って行ったのだった。
それで、森の中で寝ていたのだけど……。
「ヴェイグ様。起きてください」
「……」
私の頭の上で、うるさいと言いたげに、不機嫌そうな表情になっているヴェイグ様。
いったいなぜ、私を腕に入れて寝ているのか。
そして、腕が緩んだ隙に身体を起こして、じっと睨んだ。
「あなたは、変態ですか」
「そんなことを言われたことはない!」
「では、なぜ一緒に寝ているんですか!」
「寒かったからだ」
「私は、湯たんぽではないのですよ……一緒に寝ないでくださいよ」
「婚約したのに、問題はあるか?」
「問題しかない気がします」
まだ起床して少しなのに、疲れた気分になる。そんな私をからかうように、ヴェイグ様が私の頭に唇を落とす。
慌てたら負けのような気がするけど、湧き出る羞恥心は抑えられなくて赤ら顔になってしまう。
「お、お茶を淹れてきます!!」
「有り難いが……昨夜のうちに部下の騎士たちは先行させているぞ」
「お茶ぐらい自分で淹れられます!!」
「では、頼む」
ククッと笑うヴェイグ様は、緩めたシャツのままで、お茶を沸かしている赤ら顔の私を見ていた。
__支度するほどの荷物もないままで朝のお茶を飲めば、早速馬に乗って出発することになる。
「ヴェイグ様。馬は?」
「一頭で十分だろう。あまり目立ちたくない」
「馬ぐらい乗れるんですけどね……」
「シュタルベルグ国に着くまでは、離れない方がいいぞ。守ってやると約束した」
意外と律儀だ。手が早そうなのは少々気になるけど。
「セレスティア。おいで」
手を差し出されて、そっとその手に乗せた。ヴェイグ様が軽々と私を抱えると馬に乗せてくれる。新鮮な気分になる。こんな普通の令嬢のようなことなどされたことはない。
そんな私の気持ちなど気づかないヴェイグ様も馬に乗った。
「……疲れたら、言ってくださいね。癒しの魔法も使えますから」
「期待している」
ヴェイグ様の腕の中に包まれて言うと、馬は走り出した。
「……カレディア国に、見つからないと良いです」
「多分大丈夫だろう……だが、誰かが探す前にカレディア国を脱出したい。姿隠しの魔法を使っているから、覗き見の魔法を使われてもわからないはずだが……物理的に見つかりたくない」
そのために痕跡を残さずに、こんな森の中を進んでいるのだろう。
「……もしかして、ずっと私を隠しているのですか?」
「守ると言った。だが、常時、姿隠しの魔法を発動出来ないから、一刻も早くカレディア国を出る。だから、離れないでくれないか」
そのために急いでいるのだと言い、馬も止めることなく走らせていた。
姿隠しの魔法は、広い範囲で使うものではない。しかも、私は姿隠しの魔法は使えない。だから、探索のシードが必要だったのだけど。
ヴェイグ様は、自分の周りだけの小さな範囲しか隠せないから、私を離さないのだけど……四六時中側にいるのは、意外と緊張してしまう。
「セレスティア。飛竜に乗れば、あっという間にカレディア国を脱出できるから、もう少し我慢してくれるか。それまでは極力、魔法も使わない方がいい。今夜は、街には寄ろうと思っているから、そこで休憩するぞ」
「はい……」
覗き見の魔法でこんな遠くまで見通せるのは、きっと聖女機関の責任者で聖騎士のイゼル様だけだろう。
初老の彼は、実戦にはもう出ないけど聖力は高いのだ。
温もりを欲して身体を丸めると、違和感に気付いた。私がヴェイグ様の腕の中にいる。
そう言えば、昨夜は食事の後に馬車は騎士たちがどこかへと持って行ったのだった。
それで、森の中で寝ていたのだけど……。
「ヴェイグ様。起きてください」
「……」
私の頭の上で、うるさいと言いたげに、不機嫌そうな表情になっているヴェイグ様。
いったいなぜ、私を腕に入れて寝ているのか。
そして、腕が緩んだ隙に身体を起こして、じっと睨んだ。
「あなたは、変態ですか」
「そんなことを言われたことはない!」
「では、なぜ一緒に寝ているんですか!」
「寒かったからだ」
「私は、湯たんぽではないのですよ……一緒に寝ないでくださいよ」
「婚約したのに、問題はあるか?」
「問題しかない気がします」
まだ起床して少しなのに、疲れた気分になる。そんな私をからかうように、ヴェイグ様が私の頭に唇を落とす。
慌てたら負けのような気がするけど、湧き出る羞恥心は抑えられなくて赤ら顔になってしまう。
「お、お茶を淹れてきます!!」
「有り難いが……昨夜のうちに部下の騎士たちは先行させているぞ」
「お茶ぐらい自分で淹れられます!!」
「では、頼む」
ククッと笑うヴェイグ様は、緩めたシャツのままで、お茶を沸かしている赤ら顔の私を見ていた。
__支度するほどの荷物もないままで朝のお茶を飲めば、早速馬に乗って出発することになる。
「ヴェイグ様。馬は?」
「一頭で十分だろう。あまり目立ちたくない」
「馬ぐらい乗れるんですけどね……」
「シュタルベルグ国に着くまでは、離れない方がいいぞ。守ってやると約束した」
意外と律儀だ。手が早そうなのは少々気になるけど。
「セレスティア。おいで」
手を差し出されて、そっとその手に乗せた。ヴェイグ様が軽々と私を抱えると馬に乗せてくれる。新鮮な気分になる。こんな普通の令嬢のようなことなどされたことはない。
そんな私の気持ちなど気づかないヴェイグ様も馬に乗った。
「……疲れたら、言ってくださいね。癒しの魔法も使えますから」
「期待している」
ヴェイグ様の腕の中に包まれて言うと、馬は走り出した。
「……カレディア国に、見つからないと良いです」
「多分大丈夫だろう……だが、誰かが探す前にカレディア国を脱出したい。姿隠しの魔法を使っているから、覗き見の魔法を使われてもわからないはずだが……物理的に見つかりたくない」
そのために痕跡を残さずに、こんな森の中を進んでいるのだろう。
「……もしかして、ずっと私を隠しているのですか?」
「守ると言った。だが、常時、姿隠しの魔法を発動出来ないから、一刻も早くカレディア国を出る。だから、離れないでくれないか」
そのために急いでいるのだと言い、馬も止めることなく走らせていた。
姿隠しの魔法は、広い範囲で使うものではない。しかも、私は姿隠しの魔法は使えない。だから、探索のシードが必要だったのだけど。
ヴェイグ様は、自分の周りだけの小さな範囲しか隠せないから、私を離さないのだけど……四六時中側にいるのは、意外と緊張してしまう。
「セレスティア。飛竜に乗れば、あっという間にカレディア国を脱出できるから、もう少し我慢してくれるか。それまでは極力、魔法も使わない方がいい。今夜は、街には寄ろうと思っているから、そこで休憩するぞ」
「はい……」
覗き見の魔法でこんな遠くまで見通せるのは、きっと聖女機関の責任者で聖騎士のイゼル様だけだろう。
初老の彼は、実戦にはもう出ないけど聖力は高いのだ。