血に堕ちたライラックはウソにまみれている
第三十三話 落花するカサブランカ 2
なら、なぜすぐに捕まえないのか。
それに、こんな状況なのに、誰一人として来ない。陛下がこんな状態であるのに……。私たちは見捨てられたのだろうか。
「フィランを殺した犯人は、誰です? なぜ、フィランが……」
「……同じですよ。陛下が母にしたように、リラに同じことをしようとしたから、殺された。約束を守らずに、リラを後宮に入れようとしたばかりに……」
「約束?」
「フィラン殿下は、ある人物にリラを渡す約束をしていた。でも、彼はリラを手放すのが惜しくなって、後宮に入れて閉じ込めようとしていた。後宮に入れようとしていたことは知っていたでしょう?」
後宮に入れようとしていたことは知っていた。アイリスが、不貞腐れていたから。でも、妃の座をリラに渡さないのならと気にもとめなかった。むしろ、後宮に入れば、王妃である私に意見などできなくなるからだ。
リラはアイリスと違う。私に従順でも、大人しくもない。
だから、リラはフィランの反対も私の反対も聞かずに戦にも聖女や騎士団の負傷者を迎えに行くと言って、数か月フィランから離れた。
フィランは、王太子殿下の婚約者が行く必要はないと言って止めたのに、二人は喧嘩をしてまでリラは行ったのだ。
その隙に、私はフィランにアイリスを近づけさせて、二人はうまくいったはずだった。
「……っアリアの復讐か?」
陛下がベッドから睨みながら言う。
「さぁ? よくわからないが……母親は、病死であったし……」
感情が薄いブラッドが悩むように顎に手を当てて呟く。本当にわからないのだろう。ブラッドは誰かを悲しむような人間ではないからだ。
「だが一つ、陛下に言えば……俺はあなたを一度も父と思ったことはない。母は、あなたの後宮に入りたくなかった。だが、権力を使って母を後宮に入れた。縁談のない令嬢だと噂を流してまで……それを、すべて実の父親に話しました。彼は、お怒りですよ」
「……っ!」
「先ほども言いましたが、もう一度戦争をしますか? だが、そうなれば俺は騎士団も聖女も率いてこのクラルヴァイン王国に牙をむきます」
騎士団も聖女もいなくなれば、戦争ができるわけがない。誰が、剣を持って戦うと言うのか。だけど……。
「絶対にお前の言いなりになど……」
「陛下と王妃。その身分を鑑みて毒杯での死を勧めるが……好みでないなら、首を落としてやろう。俺はどちらでもいい」
そう言って、ブラッドが椅子に腰をかけて偉そうに足を組んだ。
「誰がお前の言いなりになどなるものか」
「助けは無い。このままだと痴情のもつれで、王妃が陛下に薬を盛ったと勘違いされるであろう」
「事実は違う! 陛下に私がそんなことをするなど……」
「確かに事実は違う。だが、邪魔なんだよ。このままだと、アギレア王国が攻めてくる。それを治められるのは俺だけだ。出来なければ、また戦争が起きて、二人は戦を再燃させた罪で投獄をしよう。攻めてくることに気付かない、そのうえ、戦争を終わらせられなかったバカな陛下と王妃として名を残せばいい。そして、アギレア王国とのクラルヴァイン王国との戦争を治めたとして、俺は英雄となろう」
「……っ」
それに、こんな状況なのに、誰一人として来ない。陛下がこんな状態であるのに……。私たちは見捨てられたのだろうか。
「フィランを殺した犯人は、誰です? なぜ、フィランが……」
「……同じですよ。陛下が母にしたように、リラに同じことをしようとしたから、殺された。約束を守らずに、リラを後宮に入れようとしたばかりに……」
「約束?」
「フィラン殿下は、ある人物にリラを渡す約束をしていた。でも、彼はリラを手放すのが惜しくなって、後宮に入れて閉じ込めようとしていた。後宮に入れようとしていたことは知っていたでしょう?」
後宮に入れようとしていたことは知っていた。アイリスが、不貞腐れていたから。でも、妃の座をリラに渡さないのならと気にもとめなかった。むしろ、後宮に入れば、王妃である私に意見などできなくなるからだ。
リラはアイリスと違う。私に従順でも、大人しくもない。
だから、リラはフィランの反対も私の反対も聞かずに戦にも聖女や騎士団の負傷者を迎えに行くと言って、数か月フィランから離れた。
フィランは、王太子殿下の婚約者が行く必要はないと言って止めたのに、二人は喧嘩をしてまでリラは行ったのだ。
その隙に、私はフィランにアイリスを近づけさせて、二人はうまくいったはずだった。
「……っアリアの復讐か?」
陛下がベッドから睨みながら言う。
「さぁ? よくわからないが……母親は、病死であったし……」
感情が薄いブラッドが悩むように顎に手を当てて呟く。本当にわからないのだろう。ブラッドは誰かを悲しむような人間ではないからだ。
「だが一つ、陛下に言えば……俺はあなたを一度も父と思ったことはない。母は、あなたの後宮に入りたくなかった。だが、権力を使って母を後宮に入れた。縁談のない令嬢だと噂を流してまで……それを、すべて実の父親に話しました。彼は、お怒りですよ」
「……っ!」
「先ほども言いましたが、もう一度戦争をしますか? だが、そうなれば俺は騎士団も聖女も率いてこのクラルヴァイン王国に牙をむきます」
騎士団も聖女もいなくなれば、戦争ができるわけがない。誰が、剣を持って戦うと言うのか。だけど……。
「絶対にお前の言いなりになど……」
「陛下と王妃。その身分を鑑みて毒杯での死を勧めるが……好みでないなら、首を落としてやろう。俺はどちらでもいい」
そう言って、ブラッドが椅子に腰をかけて偉そうに足を組んだ。
「誰がお前の言いなりになどなるものか」
「助けは無い。このままだと痴情のもつれで、王妃が陛下に薬を盛ったと勘違いされるであろう」
「事実は違う! 陛下に私がそんなことをするなど……」
「確かに事実は違う。だが、邪魔なんだよ。このままだと、アギレア王国が攻めてくる。それを治められるのは俺だけだ。出来なければ、また戦争が起きて、二人は戦を再燃させた罪で投獄をしよう。攻めてくることに気付かない、そのうえ、戦争を終わらせられなかったバカな陛下と王妃として名を残せばいい。そして、アギレア王国とのクラルヴァイン王国との戦争を治めたとして、俺は英雄となろう」
「……っ」