我が手の中に花束を~この花さしてあげよ~



入学式が終わり、各クラス振り分けられたクラスに入れば私の席は真ん中の真ん前で…………つまり、教卓のすぐ近くだった…………


ガックシと落ち込む私に黒梅先生はニヤリと笑い、そして、すん。と真顔になってから黒板に名前を書き込む。



黒梅(くろうめ) (かなで)だ。今日から1年間よろしく。いいか、お前たち。私は態度が悪いやつや不真面目なやつ、生意気なやつは嫌いだ。私が担任を務めるからには…………容赦なく、指摘させてもらうから心するように」



なんて、自己紹介を早々と切り上げ、私たちの自己紹介が始まる。


窓側の1番前から始まり、私の前の席の男子生徒が菊池(きくち) 冬季(とうき)です。と言った瞬間、何故かクラスがざわついた。何事?と思いつつ菊池さんが座ったことにより、立ち上がり自己紹介すれば今度は違う意味でザワつく。


やはり、入学式中に聞いたあの言葉達が飛び交うなか座り直せば振り返って自己紹介する私を見ていたのか、菊池さんとレンズ越しに視線が噛み合い、思わずニコッと微笑めば驚いた顔で、でも、きちんと笑みを返してくれた。未だコソコソ話す生徒たちを黒梅生徒が咳払いで黙らせて、後はつつがなく自己紹介が終わり、書類などなどを配り、明日の予定などなどを軽く説明されて解散となる。



「五十嵐さん、さっきも自己紹介したけど、僕は菊池冬季。よろしくね?」


「えっと……五十嵐千春です。よろしくお願いします?」



え、何あの子……地味なくせに菊池くんと話してるわよ。とか、図々しいわね。とコソコソ聞こえてくる中、連絡先交換しない?と聞かれるものの、私、携帯持ってないんだーと適当な返事をすれば、じゃあ、これ連絡先ね?とメモを渡され、気が向けば登録してね?と微笑まれ受け取らずに入れば手を取られ、持たされる。



「え、ちょ……」


「じゃあね、五十嵐さん」



と、教室から出ていく菊池さんに手を伸ばし止めようとするがクラスの女子生徒にたち塞がれる。



「ちょっと!貴女何様のつもりよ!五十嵐先輩の妹のくせに地味だし!あの菊池くんに声をかけられるどころか後ろの席で!?しかも菊池さんの連絡先を貰うなんて!!」


「えぇ……席は私が決めたわけじゃないし、私、連絡先教えて?って言って連絡先を貰ったわけじゃないし……」


「なっ!!何よ生意気な!!貴女なんて菊池さんに見向きされること自体レアなんだから有難く思いなさいよ!!」



ありがたやー。と手を合わせ有難く思っていたら、何そのわざとらしい態度!!と腰あたりまでのブラウンの髪色でハーフアップにして流している横髪の縦巻きロールを振り乱しながら怒る彼女は柳原明子さん。



「ロールちゃん……縦巻き決まってますね」


「えぇ、セットに3時間よ!そ、それよりロールちゃんってなによ!!」


「え、縦巻きロールがチャームポイントかと思って…………縦巻きロールからロールちゃんと言うあだ名をですね…………」


「ロ、ロールちゃん…………いいわよ!貴女これから私のことをロールちゃんと呼ぶ許可を出します!!」



え、あんまり嬉しくないんだが。と思いつつにっこり微笑みありがとう!と言えば彼女は少し戸惑いつつお礼言われるほどでも無いわよ……とモジモジし始める。


柳原さんがあの地味な子に……と声が聞こえてくるのに耳を傾けていればどうやら彼女、ロールちゃんはこのクラスの中心人物になる予定だったらしい。



「貴女達いいこと?【三つ編みちゃん】の陰口を言うならばこの私が黙っていないから!今後一切三つ編みちゃんの陰口を叩かないように!」



なんて、仕切るロールちゃんに、【三つ編みちゃん】かー。とお互い髪型で呼び合うことになるんだー。とか思いつつ帰る支度をしていれば廊下が騒がしくなる。何事かと廊下に視線を向けていればお姉ちゃんが現れて、私の名前を呼ぶ。



「お姉ちゃん?それに、河原先輩と皆原先輩?」


「こんにちは、千春ちゃん。葵が妹と帰るんだって聞かなくてね……」


「裕也!何その言い方!別に裕也が来たくなかったのなら来なくてよかったのよ?」


「そうだぞ、裕也。別に俺一人でも良かったんだがな?」



お姉ちゃんの両隣をキープしている河原裕也と皆原司。2人はお姉ちゃんの幼なじみで攻略対象者でもある2人だ。今の所お姉ちゃんとの好感度は一、二位を争っている気がする。



「あれ?千春ちゃんのお友達?」


「はい。私、柳原明子と申します」


「朋子ちゃん!千春ちゃんと仲良くしてあげてね!」


「もちろんです!三つ編みちゃんとはニックネームで呼び合う中なので三つ編みちゃんのお姉様に宜しくされずとも仲良くするつもりです」



なんて微笑むロールちゃん。お姉ちゃんの両隣に立つ先輩方は三つ編みちゃん……と私を見てふたつの三つ編みに視線を向けて笑いそうになりながらも視線をずらす。



「そうなんだ!それは良かった!千春ちゃんのお友達はみんな私目当てだったから…………貴女みたいな子だと安心ね!」



良かったね。千春!と微笑むお姉ちゃんに苦笑しつつ、帰ろ?と手を差し出してくるお姉ちゃんに私は寄りたいところあるから……と断れば驚いたような、悲しそうな顔をするお姉ちゃん。そんな顔のお姉ちゃんに申し訳なく思いつつ、先輩方に手を握られ教室から出ていくお姉ちゃんを見送り、ロールちゃんにまたあしたね!と挨拶して教室から出る。







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