高貴な財閥夫婦の猫かぶりな日常
(…………返信、ない…か…
仕事、お忙しいんだろうなぁー
…………よし!受付に渡そう!)

残念そうにスマホ画面を見つめ、秀一郎にメッセージを送り会社に入った依鈴。
受付の女性に声をかけた。

「恐れ入ります。
私、蒲郡の妻です。
主人にこちらをお渡ししていただきたいのですが……」
そう言って、弁当を見せる。

「あ、奥様!?
こちらこそ、お世話になっております!
少々、お待ちください!」

「え?あ、先程主人に連絡したところ、連絡が取れなかったので、きっと忙しくしてるんだと思います。
ですので、お渡ししていただたら大丈夫ですよ!」
微笑み言う。

「さようですか?
しかし、一度声をかけてみるだけかけてみますね!
それで取り込み中でしたら、申し訳ありませんがお引き取りを…と言うことにしましょう!
せっかく、奥様が来られたんですから…!
愛妻家の社長だって、奥様のお顔を見たいでしょうし」

受付の女性が気を遣ってくれ、内線電話をかけてくれた。

(結構、気の利く社員じゃん!
さすが!秀一郎さんの会社の社員ね!)
依鈴が一人感心していると……

「奥様、やはり社長は会議に入られたみたいです…
申し訳ありません」

「そうなんですね。
わかりました!
お心遣い、感謝します!
ありがとうございました!」

「それで、社長の秘書が取りに来るそうです!」

「え?秘書…さん?」

「はい」

「あ、でしたら私はこれで………」
そこまで言って、ふと思った。

会ってみたい……と。

どんな面をしてるか、見ておかないと!

そんなことを思い、依鈴は受付に「でしたら、秘書の方にお渡しさせていただきますね!」と言った。


数分後。
女性秘書がエレベーターから出てきて、ロビーのソファに座っている依鈴に声をかけてきた。

「奥様…ですか?」

「え?あ…はい!
こんにちわ!」

「こんにちわ!
初めまして!社長の秘書をさせて頂いてます、トクダと申します!」

丁寧に頭を下げてきた。

依鈴も丁寧に頭を下げ「初めまして!主人がいつもお世話になってます!」と微笑んだ。

(この女か……
こいつがいつも、秀一郎さんの周りに…)

「こちらこそ、いつも社長にはお世話になってるんですよ?
サポートするのは私の仕事なのに、いつも社長は優しく気遣ってくれてて……//////
私の事よく見ててくれて、例え小さな事でもすぐに気づいてくれるんですよ!」


「………」
(何この女…
この私に、喧嘩売ってんの……!!?)
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