高貴な財閥夫婦の猫かぶりな日常
「依鈴!!?」

「……っつぃ…
えへへ…また、やりました…(笑)」
(つい、見惚れて手元見てなかった…)

「えへへじゃない!
早く冷やさないと!!」

依鈴の手を取り、流し台に移動する。
後ろから秀一郎に包み込まれる形で、手に流水かけている依鈴。

ヤケドの痛みより、秀一郎に後ろから包み込まれている温もりの方を意識してしまう。

「ん?どうした?」

「へ?」

「依鈴、どこ見てるの?」

「え?あ…/////」
(おもいっきり、秀一郎さん見てました)

「………ったく…僕ばっか見てないで、集中しないとだよ?」

「え?」

「さっきからずーっと、僕のこと見てたでしょ?(笑)」

「へ?」
(ば、バレてたのかよ!?)

「視線をずっと感じてたけど、依鈴なら別に嫌じゃないし何も言わなかっただけ。
でも怪我するのなら、ダメだよ!」

「あ…ご、ごめんなさい…」

「ん。
僕のこと見つめてくれるのなら、調理中以外にして?
それなら、危なくないよね?」

「は、はい!
ごめんなさい!」

「フフ…
…………よし!落ち着いたかな?
どう?痛い?」

水を止め、少し赤くなっている手をさすり言う秀一郎。

「大丈夫です!」

「良かった!
でも少し赤くなってるから、薬塗っておこうね!」

ソファに連れていき、座らせる。
そして薬を塗って、手当てをした秀一郎。

「あとは僕がするから、依鈴はここで休憩ね!」
そう言って頭をポンポンと撫で、キッチンへ向かった。

「え!?
ダメですよ!!
このくらい大したことじゃないので、私がします!
秀一郎さんの方こそ、休んでてください!」

依鈴は慌てて、秀一郎を追いかける。

「こら!休んでて!」  

「休むのは、秀一郎さんです!」

「依鈴はヤケドしたでしょ?」

「このくらい大したことないです!」

「あー、僕の言う事聞けないの?」

「え…あ、いや…そ、それは……」

「言う事聞かないと、キス責めするよ?」

「え?」
(何、それ。
ご褒美じゃん!)

「ご飯食べる暇がなくなるくらい、キスするよ?」

「それは、ご褒美ですか?」

「………は?」

「秀一郎さんとのキスは、私にとってご褒美ですよ?」

「え?」

「フフ…
秀一郎さん、それ逆効果です(笑)
言う事聞かせたいなら、逆を言わないと!
例えば……
“言う事聞かないと、キスしないよ!”とか!」

「あ…(笑)」

「フフ…フフフ…!!」
(可愛い〜、秀一郎さん!)

依鈴がクスクス笑っていた。
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