高貴な財閥夫婦の猫かぶりな日常
「――――依鈴、笑いすぎだよ…」

それからもずっと笑っている、依鈴。
朝食を食べながら、秀一郎が苦笑いをしている。

「だってー、秀一郎さんが可愛くて…!!」

「ちょっと、間違ったの!」

「フフ…フフフ…!」

それでも笑っている依鈴を見て、秀一郎もつられるように笑った。


朝食を済ませ、一緒に片付けて、ソファに並んで座りコーヒーを飲む。

こんな穏やかな時間が、最近の依鈴のお気に入りだ。
秀一郎といると、とても穏やかで優しい気持ちになれるから。

依鈴は隣に座っている秀一郎の肩に、コツンと頭を預けた。

「ん?どうしたの?」 
秀一郎は顔を覗き込み、ゆっくり頭を撫でてくれた。

「甘え中です…/////」
依鈴が照れたように言うと、秀一郎も愛おしそうに微笑んで「じゃあ…僕は愛でてるね!」と言った。

「フフ…はい…!」
依鈴はゆっくり目を瞑り、秀一郎の優しい手の温もりを堪能していた。

しばらく秀一郎に頭を撫でてもらいながら、静かな時間を過ごしていると………


〜〜〜♪♪♪
秀一郎のスマホの着信音が、静かな二人の空間に響いてきた。

「ん…」
パチッと目を開ける。
(誰よ!せっかく、心地良い時間を過ごしてたのにぃ!!)

「誰かな?
ごめんね、依鈴」
秀一郎は依鈴の頭をポンポンと叩いて、スマホを取り立ち上がった。

そして、窓際に移動する。
(誰だよ…依鈴との時間を邪魔すんじゃねぇよ!!!)

深呼吸をして、電話に出た。
「もしもし?
…………うん、大丈夫だよ。
それで?どうしたの?
…………うん、うん。
じゃあ…解決は出来そうなんだね?
…………うん、うん、わかった。
よろしくね」

ふぅ~と息を吐いて、依鈴に向き直った。
「ごめんね!」

「大丈夫ですか?
お仕事の電話ですよね?」

「うん。トラブルみたいだけど、なんとか解決できるみたい。
だから、大丈夫だよ!」

「そうですか…!良かったぁ……」
(また、休日出勤させられるのかと思ったじゃん!!
つか!例え電話でも、秀一郎さんを煩わせるんじゃねぇよ!!)

ホッとしたように息を吐く、依鈴。
秀一郎は依鈴の隣に座り、手を包み込んだ。

「だから、そんな悲しそうな顔しないで?
今日はずっと、依鈴の傍にいるからね!」

そして安心させるように微笑んだ。
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