高貴な財閥夫婦の猫かぶりな日常
ホテルを出ると、ドアマンが車をエントランス前に停めてくれていた。

鍵を受け取り、秀一郎が助手席に依鈴を乗せる。
そして自身も運転席に乗り込んだ。

「蒲郡様、本日もありがとうございました!
いってらっしゃいませ……!」

丁寧に頭を下げてくる中、車を発進させた。


「依鈴、これからどうする?
帰る?
それとも、どっか行く?」

「そうですね……
うーん…秀一郎さんと手を繋いで街を歩く…とか?」
秀一郎の顔を窺うように言う。

「うん、了解!」
秀一郎は前を向いたまま、微笑んだ。

「あ、でも!
秀一郎さんが行きたいところに行きましょ?
お疲れなら、家でゆっくりしてもいいし!」

「依鈴のしたいことしようよ!
僕は依鈴が喜んでくれることなら、何でもするよ?」

「でも、今日は私…
主婦らしいこと何もしてません…」

「え?」

「朝食は秀一郎さんに作っていただいたし、お掃除もお洗濯もしてません。
その上ランチは、外食でしたし…」

「………」
秀一郎が近くのコンビニに車を停めた。

「ん?コンビニ?」

「依鈴、僕を見て?」

「はい」
(うわぁー、カッコいい〜//////
なんだろ?)

「依鈴は“僕の奥さん”
わかってるよね?」

「え?はい!もちろん!」

「“僕の奥さん”のために家事を手伝うことって、悪いことなの?」

「え?」

「奥さんは、家事を休んじゃいけないの?」

「あ、いえ…」

「外食もしちゃいけないって誰が決めたの?」

「秀一郎さん…」

「僕は、依鈴に“家事をしてもらうために”結婚したんじゃない。
依鈴とこれからの人生を過ごしていきたいと思ったから、結婚したんだよ?
ずっと傍にいてほしいって思ったから!
家事をしてもらうだけなら、家政婦雇うし!
…………あ!でも、家政婦じゃ物足りないだろうなぁー(笑)
依鈴の家事、完璧だから!」

「そうですか?
私、ちゃんと出来てますか?」

「もちろん!
自慢の奥さんだよ!」

「……/////」
(ヤバい…//////めっちゃ嬉しい…!!)

「……ってことで!
今日は、依鈴も家事お休みね!
夜も、何処かで外食しよう!」


「フフ…はい!」
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