高貴な財閥夫婦の猫かぶりな日常
本性と高貴で最強の夫婦
パチーーーーン!!!!

依鈴がトクダの頬を平手打ちし、叩いた音が響き渡る。

「いったーーーい!!!
何する――――――」

「うるせぇ!!!
愛する人の前で猫かぶって何が悪い!?
あ?
それでお前に何か迷惑かけた?
だいたい!!
世の中の奴等は、誰一人猫かぶってないって言えんのかよ!!?
お前だって、好きな人の前では多少は猫かぶるんじゃねぇの!?
それは良くて、なんで私はダメなんだよ!!?
猫かぶることがダメなんなら、お前も化粧落として、着飾ってるもん全て捨ててみろ!!!
そんで、本音をさらけ出してみせろよ!!」

「なっ…!!!」

「ほら、そこで化粧取れよ。
そのアクセサリーも、全部捨てろ!!」

「な、何言ってん…の……?
そうゆうこと、言ってるんじゃないし……」
思わず後ずさる、トクダ。

「は?
その私に説教しといて、逃げんの?」

「ち、違…っ……」

「どうせ、秀一郎さんにバレる。
それなら、もう全部がどうでもいい。
だったらやりたいようにやらせてもらうし、言いたいことも言わせてもらう。
言っておくけど、私からすればお前なんてその辺の雑魚以下だから。
雑魚が、私に説教すんじゃねぇよ!!!」

「―――――依鈴」 

そこに、秀一郎の声が聞こえてきた。

「はぁはぁはぁ…え……あ…しゅ、秀一郎さ……」 

振り向くと、秀一郎が切ない表情で立っていた。
そしてゆっくり依鈴に近づきながら、優しく落ち着かせるように言った。

「落ち着いて?
大丈夫だよ?
大丈夫、大丈夫…ね?」

「あ…あ…す、すみません…!!
こんな失態……」
(なん…で……秀一郎さ…が……?
…………嫌われた?!!
………も…終わり…だ……)

叱られた子どものように怯え、瞳が切なく揺れている。

「ううん!大丈夫だよ!
…………フフ…そっかぁ!
本音か!!
そうだね!
じゃあ…“俺も”本音さらけ出すね!」

何故か、秀一郎は嬉しそうに依鈴を見て言ったのだ。

「え……!?」
(お、俺!?)

わけのわからない、依鈴。
そして秀一郎は、トクダを見据え睨みつけた。

「おい、お前。
俺の依鈴をよくも傷つけてくれたなぁ!!?
待ってろよ?
お前を地獄に落としてやる。
二度と這い上がれない地獄になぁ!!!」

その表情、声色、雰囲気…全てが、恐ろしく落ちていた。

「え……秀一郎…さ、ん?」

 
「依鈴、大丈夫だよ!
“これ”は、抹殺してあげるからね!
俺の依鈴を傷つける奴は全て、抹殺してあげる!」

そして依鈴に満面の笑みで言い、愛おしそうに抱き締めた。
< 28 / 31 >

この作品をシェア

pagetop