高貴な財閥夫婦の猫かぶりな日常

仕事を終え、秀一郎が帰宅する。

駐車場に車を停め、降りると……
待ち構えていたように、玄関のドアが開いた。
パタパタ…と依鈴が駆けてくる。　

「秀一郎さん！おかえりなさい！」
駐車場のシャッターが開く音がして、依鈴が出てきたのだ。

「フフ…ただいま！
いつも、ここまで出迎えに来てくれて嬉しいな！」
（このまま閉じ込めてぇー！！）

秀一郎は嬉しそうに笑い、依鈴の頬にキスをした。


「秀一郎さん、今日はお仕事どうでした？
大変でしたか？」

「そうだね。
充実してたけど、ちょっと忙しかったかな？
だからランチの時間も、少し遅くなってしまってね…
だから、感想の連絡が出来なかった。ごめんね…」

「いえ！
大変でしたね……
いつも、お疲れ様です！」

「あ、でもね！
依鈴のお弁当食べて、元気になったよ！
今日も美味しかった！
いつも、美味しいお弁当をありがとう！」

「フフ…良かった！
秀一郎さんの癒しになれて！」

「当たり前だよ？
依鈴は僕の癒し！
………僕の、天使…！」
「……/////」
秀一郎の言葉に、依鈴が照れたように笑った。　

一緒に部屋に向かい、秀一郎の着替えを依鈴も手伝う。

「あ、そうだ！
今朝怪我した指はどうかな？
痛み、引いたかな？」

「はい！大丈夫ですよ！
ほら！」
手をグーパーとしてみせる。

その手を優しく包み込み、依鈴の顔を覗き込んだ。
「良かった！
他には？変わったことなかったかな？」

「はい！」

「良かった！」

フフ…と二人は、微笑み合っていた。


「――――今日も美味しそうだね！」
ダイニングテーブルに並んだ夕食を見て、歓喜の声をあげる。

「フフ…！
あ、ランチ遅かったなら、少しご飯の量を減しますか？」

「ううん！
こんな美味しそうな料理見たら、また食欲が湧いてきたよ！
いつも通りの量食べるよ！」

向かい合って座り、食べ始める。
食事をしながら二人は今日あったこと等、色んな話をする。

「―――――それで、少し多めに入れてくださったんです！」
精肉店の店主のことを話す、依鈴。

「そうなんだね！
でも、ヤキモチ妬いちゃうな！」

「え？」

「依鈴は僕の奥さんだから！
例え冗談でも、僕以外の男性の所へ行ってほしくないなぁー(笑)」

「……/////そんな…//////
でも私だって、実は嫉妬してるんですよ？(笑)」

「ん？」

「お仕事とはいえ、女性秘書さんといつも一緒でしょ？
その秘書さんが、羨ましいです……
日中ずっと、秀一郎さんといれるから………」

依鈴は、切なく瞳を揺らした。