高貴な財閥夫婦の猫かぶりな日常
ガタッと椅子から立ち、依鈴の足元に跪いた秀一郎。
依鈴の手を優しく掴み、依鈴を見上げた。

「泣かないで?依鈴。
大丈夫だよ!
依鈴が僕だけの奥さんなように、僕も依鈴だけの旦那。
秘書も、あくまでも“仕事上の付き合い”
ね?だから、安心して?」
(あぁ…ほんと愛しいなぁー
依鈴が許してくれるなら、あんな女すぐにでも抹殺するのに…!!)

「はい/////
秀一郎さんのその言葉だけで、私は生きていけます……!
ごめんなさい、みっともない嫉妬して……」

「そんなこと…
いいんだよ?
僕こそごめんね。
依鈴に寂しくて辛い思いをさせてる。
旦那失格だね……(笑)」

「そんな…!!
秀一郎さんは、とっても素敵な方です!!
私の自慢の旦那様です!!
どうか…そんなふうに言わないで?」

「依鈴…うん、ありがとう…!」

依鈴が秀一郎の手を握り返し、訴えるように伝える。
秀一郎も、安心したように微笑んだ。


「――――秀一郎さん、お風呂沸きましたよ!」

「あぁ!ありがとう!」
秀一郎は返事をして、風呂場に向かった。
しばらくして、依鈴が着替えなどをカゴにセットしていた。

すると……
ガチャ…と戸が開き、腰にタオルを巻いた秀一郎が出てきた。

「キャッ!ご、ごめんなさい!!//////」
(え!?え!?どうして出てくるのー!!?
目のやり場に困るよぉー!!
いくら私でも、免疫ないんだからぁー!!)
依鈴が慌てて、出ようとする。

「あ!依鈴!待って!」
そんな依鈴を後ろから抱き締めた、秀一郎。

「秀一郎さ…//////」
(や、やだ…/////ドキドキするぅ//////)
依鈴は、顔や耳まで真っ赤になっている。

「ごめんね、わざとに出てきちゃった!(笑)
依鈴も中に引き入れようと思って…!」  

「え…?//////」

「もうそろそろいいかなって…!」

秀一郎と依鈴は、まだキス以上のことしていない。
本当は交際してすぐにでも、全てを貪り尽くしたかったが(表向きは)純粋な依鈴を傷つけたくなくて、ずっと我慢していた秀一郎。

“結婚するまでは、キス以上手を出さない”と決めていた。

結婚し四ヶ月経った今、もういいのでは?と思い、誘ったのだ。

「あ…あの…//////秀一郎さ…//////」
依鈴が振り返り、向き直った。

「ん?
やっぱ、嫌かな?怖い?」

「あ…いえ!
でも私…その…初めてで……//////」
(嫌なわけないよ!!
秀一郎さんなら、ぜ~んぶあげるんだから!!)

恥ずかしそうに、秀一郎を見上げた。
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