高貴な財閥夫婦の猫かぶりな日常
家族と唯一の友人
「――――いらっしゃ〜い!」

依鈴は後日。
唯一の友人で幼なじみ・ミオリに会っていた。

「えぇ!
ミオリ、これ!」

「おっ!ありがと!
○○のミルフィーユじゃーん!」
ミオリは、家族以外で唯一依鈴の本性を知っている。

「話聞いてー?」

「もちろん!
ついに!なんでしょ?」

「わかるの?」

「当たり前よ!
何年付き合ってきたと思ってるのよ!(笑)」

「フフ…ありがと!」


「――――てか、ここまでどうやって来たの?」
コーヒーを出しながら、問いかけてくる。

「秀一郎さんが送ってくれた!」

「そう!良かった!」

「帰りもね、迎えに来てくれるって!」

「フフ…そう!
愛されてるのね!」

「フフ…まぁね〜!」

「でも、良かったの?
今日旦那、仕事休みなんでしょ?
一緒に過ごさなくていいの?」

「昼から仕事らしいのよ…
………ったく…秀一郎さんを休みの日まで働かせるなんて!!
あー、思い出したらまた腹が立ってきた!!」

「ちょっ…依鈴!落ち着きな!
ね?
あ、ほら!聞かせてよ!
旦那との話!」 

「あ、そうね!
つい……
あーダメ…ミオリの前だと、理性が保てない。
化けの皮が剥がれてしまう(笑)」

「でもその化けの皮、ずっと貼り付けたままで大丈夫なの?」 

「大丈夫じゃないのよ!
だから、こうやってミオリに会いに来てんのよ!
まぁ今日は、デレるためもあるけどー!」

「いつかはバレるんじゃない?」

「そんなミス犯さない!
絶対に!」

「疲れない?」

「疲れる?
うーん…ちょっと、違うかな?」

「ん?」

「とにかく、常に“嫌われたくない”って感情が働いてるから、疲れはしない。
でも、化けの皮が剥がれそうで不安が付いて回ってるって感じ……(笑)」

「でもさぁー」

「んー?」

「旦那、嫌わない気がするけどな!」

「は?
んなわけないじゃん!」

「だって依鈴は気が強くて口が悪いだけで、悪女とかではないし!
ただ、感情に正直なだけ!
それよりも私は、あざとい女の方がよっぽど悪だと思うわ!
同じ化けの皮でも、依鈴は可愛いわよ?」

「そう?
そんなこと言ってくれるの、ミオリだけよ?(笑)」

ミオリの言葉に、依鈴はクスクス笑っていた。
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