謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

そんなの無理よ。
お父さんは普通のサラリーマンで、お母さんはパート。
家のローンだって払い終えてない2人に、余分なお金なんてない。
お父さんは、去年体調を崩して入院したばっかりだし……そんなこと知ったら、また倒れちゃう。

「い、いくら、なんですか? 藍が借りたのは」

ここはもう、とりあえずあたしがなんとかするしかない。

無理やり覚悟を決めて視線を上げると、それでいい、と言わんばかりの満足そうな笑みとともに三本指を示された。

あたしは密かにホッと息を吐く。
「三十万ですか。それならすぐに――」
「違う」

違う? まさか……えぇ、三百万?

仕方ないわ。結婚資金にって貯め続けてたお金、あとは自分の貯金と、もろもろかき集めれば、なんとか……

「おいおい、三百万とか、考えてるんじゃないだろうなお姉さん」

「……え?」

「桁が違うよ、桁が」

け、け桁が違う? え、は? 嘘でしょ、三百万の上って……
いやいやいや、まさか、はははっ、まさかよね……?

「……さんぜん、まん?」

掠れた声で恐る恐る口にすると、あっさり頷かれてしまい、全身からぶわっと嫌な汗が吹き出した。嘘でしょう?
「そんなお金、何にっ……?」

「さぁな。詳しく聞いちゃいないが、本人はいたって普通の暮らしをしてたみたいだし、おそらくホストか地下アイドルか、ハマっちまったんだろうなぁ。そういう例は腐るほどあるから」

ホスト?
地下アイドル?

確かに藍はアニメオタクで、声優のファンクラブには入ってたけど……
そんな金額、本気で使う!?

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