謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「じゃあ、まずは……やっぱりあれかな」
彼が最初に指したのは、たこ焼きだった。
なるほど。お祭りグルメの王道ね。
「了解」と頷いて、あたしはそちらへ足を向ける。
「おじさん、1皿くださーい」
「あいよっ。お、彼氏、イケメンだねぇ。美男美女カップルで羨ましい」
話す間も、光速で動くおじさんの手は止まらない。
生地を流し込み、具材を入れ、焼けたところからくるくるひっくり返して……
「うわ、すっげ……。これが職人技ってやつか」
その動きがショーみたいで面白いのか、キョウは息を止めるようにしてガン見してる。
「へいっお待ち! 熱いから気を付けてねー」
「ありがとうございます――はい、どうぞ」
爪楊枝を渡すと、湯気を上げるたこ焼きを凝視したまま、キョウは恐る恐るといった調子で突き刺す。
きっと初たこ焼きね。気に入ってくれるかな?
慣れない様子から推測して見守っていたら、はふはふ、と熱そうに頬張った彼はすぐ、ぱぁあっと子どもみたいに目を輝かせて相好を崩した。
「めっっちゃくちゃ美味い! なんだこれ、こんなの食べたことがないっ。最高っ!!」
「ふふ、よかった」
「見ろ見ろ翠! ほんとにタコが入ってる!」
「だからたこ焼きって言うんでしょー」
初体験らしい新鮮な反応に笑っちゃいながら、あたしもパクリ。
うん、久しぶりに食べたけど美味しい!
「オレ、ニート止めてたこ焼き屋になろうかな」
「あはは、いいわね」
「いや、冗談じゃなくて、本気だぞ?」
「いいわよー。あたしお客さん第一号になってあげる」
「うわ、ダメ出し厳しそー」
「当たり前じゃない。味には厳しいわよ?」
ぎゃいぎゃい言い合いながら、あっという間に完食しちゃった。
その後あたしたちは、屋台グルメに目覚めたキョウの欲望の赴くまま、焼きそば、ホットドック、唐揚げ、ベビーカステラ、チョコバナナ……と食べ進めて。
「さすがに帯が苦しい」
「限界突破したかも」
それでも最後の〆に、かき氷をチョイスした。