謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

「はい、イチゴとブルーハワイですね。ありがとうございましたー」
「どうもー」

店員のお姉さんからかき氷を両手に受け取ったあたしは、振り返ってキョウの姿を探す。

あれ? いないな。
ここらへんで待ってるって……え、まさかはぐれた!?

慌てて周囲へオロオロ視線を走らせる――と、さっきまではなかった人だかりが視界を掠めた。

気になったのは集まってるのが女子ばかりで、黄色い歓声が飛び交ってることだ。
まさかキョウ、あの全員から逆ナンされてるんじゃ。あり得る……と近づいてみると、どうやらあの長身は人だかりに含まれていない様子。

じゃあ違うか。
一体彼はどこに……

眉を下げつつ、1歩2歩と歩きながらもう一度ぐるりと辺りを見回した時だった。

「翠!」

聞き覚えのある声が聞こえたすぐ後、目の前の人だかりが2つに割れ、その向こうに見慣れた美貌が見えてホッとした。

「キョウ」

近づいて行くと、彼が椅子から立ち上がる。
そうか、座ってたからわからなかったんだ。

「お、ブルーハワイ。サンキュ」

歩み寄って来たキョウの手へかき氷を手渡しながら、ふと気になったのはもう片方の手に彼が持ってるスケッチブックだ。

「キョウ、それ何?」

チラリと目をやれば、繊細なタッチで人物を描いたモノクロの鉛筆画が見える。
ものすごく上手い。

「あぁ、ちょっと遊んでた。これ、返すわ」

そう言ってキョウが振り返ってスケッチブックを渡したのは、おそらくもともとそれの持ち主であろう男性。

道端に置かれた椅子や飾られた絵を見るに、どうやら似顔絵画家、ってやつらしい。
イベントでたまに見かけるよね。
ただ、さっきのページに描かれてた絵は、飾られてるそれと明らかにタッチが違う。
さらに言えば、モデルはたぶん画家本人で……。

えっと、どういうこと?

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