謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
そのままかき氷を食べつつ向かったのは、河川敷に設置された花火の観覧席。
席、といっても等間隔にブルーシートを敷いただけのものだけど。
混乱を避けるためという理由からそのエリアは有料になっていて、事前予約でゆっくりゆったり見ることができるのだ。
ちょうど最後の陽光が沈み、夕闇が広がり始めた時刻。
たっぷり食べて楽しんで、ちょうどいい感じに間に合ったみたいだ。
一安心したあたしは、ふと思いついて、隣へ視線を滑らせた。
「ねぇ、キョウ、ちょっと舌出して見せて」
「え?」
「ブルーハワイのかき氷食べるとね、舌が青くなるの」
知らないでしょ、とドヤ顔気味に言えば、「へぇ、ほんとに?」とキョウが素直に舌を出してくる。うんうん、やっぱり真っ青。
「ふふふ、ちょっと待って、鏡見せてあげる」
「翠は? 赤くならないのか?」
「んー赤はあんまり目立たないかな。青が、やっぱり一番インパクトがあって」
コンパクトミラーを見せてあげようとポシェットを探る――と、その手を彼の手に止められた。
「え?」
「赤と青で混ぜたら、紫になると思う? 試してみようか」
「は?」
あたしを覗き込むその瞳が悪戯っぽく煌く。
その意図がはっきりと読めて、ギョッとした。
「ままま混ぜる、ってまさか……」
「だからさ、こう――」
舌を出したまま迫ってくる顔を、ぐぐっと押しやる。
「ばかっ! なな何考えてるのよ、こんな外でっ」
「誰も周りなんて気にしてないって」
そりゃ、座ってしまうとそれなりに彼の美貌も群衆に紛れ込んではいる、いるけれども!
「ダメダメダメッ」
腕を押さえられて逃げるに逃げられず、ジタバタしながらパニック気味に顔をそむけた、ら。
「ぶはっ!」
いきなりキョウが吹き出し、そのままケラケラお腹を抱えて大爆笑。