謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「あははははっ……翠、焦りすぎ。可愛いー」
「ちょ、揶揄ったの!?」
「ぶぶっ……当たり前じゃん。ごめん、面白すぎて腹痛い」
「性格悪いわよ!?」
「知ってる」
知ってるんかい!
「だから、ごめんて。くくくっ……」
「もう知らないっ」
「ごめんごめん、機嫌直して翠? カワイイ顔が台無しだぞ?」
笑い交じりに言って、宥めるようにあたしの肩を抱く。
まるで恋人みたいに自然な態勢と距離に、とくん、と胸の奥が甘く音を立てた。
彼にとっては、なんでもない通常モードのスキンシップなんだろうけど、あたしにとっては……
「なぁ、翠」
急に改まった口調で名前を呼ばれて、慌てて頭の中の独り言を打ち消した。
「な何?」
「前に、誰かと一緒に食べると楽しいって、言っただろ?」
――やっぱり誰かと一緒に食べるのって楽しいもんだなと思って。
あ、あぁはい、ええと、新宿でラーメン食べた時よね?
「ぅ、うん、覚えてる」
「あれ、間違ってた」
「間違い?」
「そう。誰かと一緒に食べるのが楽しいんじゃなくて、翠と一緒に食べるから、楽しいんだ」
「え……?」
とっさに動かした視線の先で、こちらを見つめる澄んだ眼差しとぶつかった。
どこか切なげに瞬くその瞳に、あたしが映りこんでいる。
トクン。
トクン、トクン、トクン……
「翠、オレ――」
何かを言おうと、彼の唇が開きかけた。
と、次の瞬間。
ひゅーぅるるるるるっーーー………
ドーンドーーーンッ!!