謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
ドンドンドン!! パンパンパパッ………
「わっ始まった!」
みんなの視線が一気に上を向く。
ドーンドンドーン……!!
次から次へ、夜空へ咲き誇るカラフルな大輪の花たち。
それは見事の一言で、瞬く間にそれまでのやり取りをかき消してしまった。
「わ、わわっ……すごいねっキレー!」
「あぁ。すげーな……」
花火の音に交じって、「たまやー」「かぎやー」など、定番のかけ声もあちこちから聞こえてくる。
「あ、キョウ、“たまや”って知ってる――」
話そうとして、口を噤む。
「…………」
反応がないなと視線を向ければ、キョウは無言のままじっと、花火に魅入っていた。
瞬きすら惜しい、とでもいう風な集中ぶりで、気に入ってくれたんだなとほっこりする。
そうね。おしゃべりなんて、野暮なことは止めよう。
言葉なんていらないもの。
同じように、動くこともその空気を邪魔してしまうような気がして、あたしは大人しく肩を抱かれたまま、一緒の空を見上げた。
ドーンドーーーンッ!!
ドンドンドン!! パンパンパパッ………
たぶん、来年の花火大会、キョウと一緒に来ることは叶わないだろうな。
だからせめて今、この輝きを目に焼き付けておこう。
この胸の切なさと、ときめきと一緒に。
「…………」
そう言えば彼、花火の前に何かを言いかけてたな、と思い出したのはもっと後のこと。
最後の一発が終わるまであたしたちは一言も話さず、まるで一つになったみたいにピタリとくっついて、その贅沢な時間に浸ったのだった。