謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

帰り道、手を繋いで駅へ向かって歩きながら、あたしたちは言葉少なだった。
全身に残る1日の余韻に、まだ浸っていたかったから、かもしれない。

キョウも同じことを感じてくれてたら、嬉しいな。

隣を歩くその人へ、チラリと視線をやる。
そして考えるのは、今夜これからのこと。

帰りたく、ないな。

今夜はそのまま帰るって決めてたはずなのに。
言い訳だって散々考えたのに……。

あぁダメだ。ダメよ、自分に負けちゃ。
これ以上彼に関わったら、自分が辛くなるだけでしょ。
ちゃんと帰りなさい。

心の中でせめぎ合う、相反する気持ち。
やるせない想いだけが募って、もうどうしたらいいか――


「痛っ」

思わず顔が歪んだ。
あーしまった、あと少しだったのに。

「どうした?」

「あ、ええと、足が、慣れないとちょっとね。やっぱり、キョウみたいにスニーカーにしとけばよかったかも」

笑いながら平気だと強調するが、キョウはすぐに真顔になる。
そして「ちょっとこっち」とあたしを人波から庇うように移動して、歩道の端へ誘導。
さらには「見せてみて」と躊躇なく地面に膝をつかれてしまい、アタフタしちゃった。そんなに大事(おおごと)じゃないのに!

脇を通り過ぎていく人たちの視線がイタすぎる。

「いや、ほんとに大丈夫。ちょっと鼻緒があたって痛いなって。靴擦れみたいな感じよ。大したことないっ……」

「オレの肩に捕まっていいから。ほら、ここに足載せて」

そう言うなり、自分の膝の上へ――

「わ、ちょっ」

有無を言わさず、草履を脱がせたあたしの足を乗せてしまう。
やだ、なんかこの態勢、恥ずかしすぎっ……。

「血が出てる。痛かっただろ、これは」

う。実は、食べ歩きしてる時から地味に痛かったのは事実。
そんなことは言わないけど。

「平気平気。あとは帰るだけだもの。電車乗っちゃえば、そんなに時間もかからないし」

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