謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「乗り換えだってあるだろう。この足じゃ無理だ」
「別に骨折したわけじゃないんだし、大げさな……」
大げさっていうか、過保護っていうか?
あの、お願いだから早く手を放してくれないかな。
素足に触れる温度が、生々しすぎて落ち着かない。
「あ、じゃあコンビニで絆創膏買っていい? 貼ったら大分マシになると思うの」
とにかく離れてほしくて苦肉の策をひねり出すが、キョウは渋い表情のまま。
「コンビニよりむしろ……」と何かを思案するように視線をあちこちへ彷徨わせる。
それから、「もうちょっとだけ歩けるか? あの角まで」と提案された。
「角まで?」
いや、だからね、全然歩けるのよ?
心の中で言い訳しつつ、彼に支えられるようにして指示された場所まで進む。
その角から続いているのは、駅へ向かう大通りからは逸れてしまう細い道のようだ。
ここに何か?
どこか、休めるカフェでも探そうってこと?
訳がわからず首を傾げていた、ら。
「きゃぁっ」
いきなり身体が重力を無視して浮き上がって、周囲からどよめきと黄色い歓声が一斉に沸き、心臓が止まりそうになった。
こんなところで姫抱っこ!?
「ちょ、キョウっ下ろして!」
「重くないから落ち着けって。前の時も落とさなかっただろ」
「それは、まぁ……」
あなたの筋力がなかなかのものだってことは、知ってますが!
「この方が速いんだよ。我慢しろ」
「うぅ」
言い合う間も彼の足は止まらず、どんどん大通りから離れてわき道を進んでいく。
それと共に好奇の視線や歓声も遠ざかっていったから、まぁそれはよかったけれど。
思いっきりローカルな空気漂う見知らぬエリアに入り込んでしまい、一体ここはどこ? とこちらは困惑するしかない。
反対に、キョウの足取りには全然迷いがなく、もしかしてこの辺り詳しいのかも、との思いが過る。
「ねぇキョウ、ええと、どこに行くの?」
「ん? あぁ、オレん家」
「あ、あぁ、おれんちね。…………オレん家ぃっ!?」