謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
7. おうちにお邪魔します。
ぃい……家、はマズい。
絶対マズいでしょ。
家になんか行ったら、間違いなくそういうコトに雪崩れ込んじゃう。
数多の恋人たちと過ごしてきたであろう彼のベッドを使うのも嫌だし、それに――……
「ほんっとに大したことないんだってば。全然歩けるし!」
「無理はしない方がいいだろ」
「じゃあタクシーで帰るから、それならいいでしょ?」
「こんなイベントの後に、タクシーが捕まると思うか?」
「アプリで探すからっ」
「同じことだろ」
だから抵抗したわよ、精一杯。
「ほらっ突然こんな夜遅くにお邪魔したらご迷惑でしょ? 」
「は? なんで? 全然大丈夫」
「だって、ご家族とか――」
「なに、来たくない理由でもあるの?」
「や、やや、別にそんなっ……」
けど、ダメだった。
「さっきから言ってるでしょ、コンビニにちょっと寄ってくれればいいのよ。絆創膏があればいいんだし」
「一番近いコンビニは駅前。ここからなら、オレんちの方が早い」
どんなに言葉を尽くしても右から左へと流され、彼の意志を変えることは叶わず。もう諦めるしかなかった。
それから姫抱っこで運ばれること10分ほど、あたしたちは目的地に到着した。
花火大会の最寄り駅を聞いて彼が微妙な顔をしているように見えたのは、自宅の近くだったからなのかもしれない。
そう考えてしまうくらいの距離だった。
今まで一度も誘われなかった、謎のベールに包まれた彼の自宅。
こんな時とは言え、確かに興味はある。
そこは果たして白亜の大豪邸か、あるいは雲に届くようなタワマンか?
戦々恐々とするあたしの前に現れた現実は――