謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

そのどちらでもなかった。

新築とは言いがたい細長い小ぢんまりしたマンションで、数えてみると7階まであり、彼が住んでいるのは最上階だという。

ニート=実家暮らし、と勝手に想像していたが、まさかの1人暮らしだったらしい。

まぁ、もしこの建物がまるごと彼の親の持ち物だとしたら、23区内でもこの辺りは地価も高いし、ビル1棟でひと財産よね。さすがはセレブ。


中は、一体どんなお部屋なんだろう?

三千万もポンと出せるお坊ちゃまだし、着てる服とか身に着けてるアクセだって、いつもおしゃれだし……

例えば、イタリア製のソファとか照明とか? 北欧ブランドのダイニングテーブルとか椅子とか? 何の意味があるのかよくわからない小ジャレたオブジェとか? 

そんなものが溢れてる空間、つまりインテリア雑誌に掲載されるようなこだわりの部屋を勝手にイメージしてた。

ところが数分後、あたしの予想はいろんな意味で裏切られた。


専用の入口から直通エレベーターでたどり着いたペントハウスは、1R。
1フロアを1戸で占領してるためか、かなりゆとりはある。

家具があまりないから、余計にそう見えるのかもしれないな。
室内はつまり、とってもシンプルだった。

目につくのは大きめのパイプベッドと、窓際に置かれたデスクとパソコン。いくつかの観葉植物だけ。
テレビもなければ、テーブルもソファもない。

たぶん……
カウンターキッチンの脇にスツールがあるから、ご飯はあそこで食べてて。
奥のドアがクローゼットっぽいから、あの向こうにいろいろ詰め込んでいるのかもしれない。服やアクセサリー類をしまう場所は必要だもんね。

とはいえ。
ミニマリストだって、もう少し何か置いてるんじゃないの? って、ぽかんとしちゃった。

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