謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
そんな目で見ないでよ。
これ以上傍にいて、触れ合ったりしたら……自分が何を口走るか怖いんだってば!
追ってくる視線から逃れるようにドアの方へ歩き出しながら、あたしは早口で続けた。
「や、だってあの、ほら、浴衣早く着替えたいし。他に何も準備してきてないから……キョウだって早く休みたいでしょ? たくさん歩いてきっと疲れて――」
「冗談だよな?」
追いかけてくる軽い口調が、逆に怖い。
顔を見なくてもわかる、これはたぶん、かなりイラついてる。
そりゃそうよね。
わざわざ自宅まで連れてきたんだもの。すっかりソノ気だったんだろう。
求められるのは嬉しい。
抱かれたいって気持ちもある。
でも……でも、やっぱり、あたし……
揺れる視線を彼に合わせることはできないまま、もつれそうな唇を開く。
「だ、大丈夫、送ってくれなんて言わない。一人で駅まで行けるから。さっきスマホで調べてここがどのあたりかはわかってるし。今なら電車まだあるし――って、キョウっ!」
悲鳴のような声が飛び出した。
強く腕を掴まれて、引き寄せられたのだ。
「……帰すわけ、ないだろ」
さっきまでの朗らかさは欠片も残っていない。
苛立ちが滲んだ眼差しに真上からひたと見つめられ、呼吸が浅く乱れていく。
散々彼に抱かれた身体が、植え付けられた快楽を思い出して疼き始める。
このまま流されてしまえたら――
切なく叫ぶ本能を振り切るように、強くかぶりを振った。
「だっ……だ、ダメ。今夜はごめん、許してっ……あたし、帰っ」
ジタバタ身じろいで、その束縛から抜け出そうと試みる。
さすがにこれだけ嫌がれば、彼だって――……なんて、甘かった。
次の瞬間、キョウは無言のまま、あたしの帯をぐいっと引っ張ったのだ。