謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「ちょ、え? なな何すっ……」
するすると解かれ、床にとぐろを巻いていく帯が視界に映り、パニック気味にフリーズする。
「ほら、これでもう、逃げられない。少なくとも、今すぐは。さすがにこのまま外には出られないもんな?」
呆然と立ちすくむあたしを背後から抱きしめ、耳元へ嘲笑うような仄暗いつぶやきを落とすキョウ。
ゾクリとあたしが身体を震わせるのと、後ろから伸びてきた彼の手が浴衣の胸元へ差し込まれるのとは、ほぼ同時だった。
「浴衣姿の翠を一目見た時からずっと、思ってた。脱がせたいって」
「ちょ、ちょっと待っ……ダメよ。どこ、触ってっ」
「ダメ?」
鼻で笑いながら、襟を押し広げてもう片方の手も中へ入れてくる。帯はすでに引っかかっているだけ。阻むものなんてないに等しい。
「残念ながら却下だな。むしろここまで我慢したオレを褒めてほしいね」
「そんなっ」
他にいくらでもお相手がいるでしょう?
なにもあたしじゃなくたって……
けれど、浴衣の中で蠢く彼の手が両胸の膨らみを的確に探し当ててしまい、抗議の声は切れ切れの喘ぎ声に取って代わる。
一応、浴衣の下には肌襦袢代わりのブラスリップを身に着けてる。カップ付きのやつ。とは言っても、たとえ布越しでも触れられ揉まれれば、感じてしまうのはどうしようもない。
「んっ……、や、ぁっ」
やわやわと……決して強くない、どちらかというと優しい触り方。
なのに効果は絶大で。
じれったいようなもどかしいような、狂おしい疼きに全身が震え、もっと強い刺激が欲しいと浅ましい願望が頭を掠める。
あぁ、膝に全然力が入らない。もう崩れ落ちそう。
……でもダメ。ダメなのよ。
今抱かれたら、耐えられそうにない。
きっと言ってしまう――あなたが好きだって。
「ビクビク感じちゃって、ほんと可愛いな。素直に抱いてって言えば?」
鼓膜を愛撫する、誘惑を纏った響き。
あたしは負けまいと、懸命に首を振った。
「言わ、ないっ……お願い、放して……」
「……へえ。そんな蕩けたエロいカオしてるくせに、まだそんなこと言う? オレに抱かれるのは、そんなに嫌か?」
彼の声から抑揚が消える。
本能が、マズい、と警報を鳴らした――