謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

「ん……」

「気が付いたか?」

ゆっくり目を開けていくと、まだ夜は明けてないらしい。
ダウンライトのみの室内は薄暗く、静かだった。

「え、あたし……え、と」

盛大に掠れた声にギョッとしつつ、混乱した記憶を探る。

花火大会へ行って、それからキョウの部屋へ連れてこられて……自分が何も身に着けておらず、キョウの腕枕で横になっていることに気づき、そこで昨夜の一連の出来事をすべて鮮明に思いだした。

ハッと、両手を目線の位置へ持ち上げる。
帯はいつの間にか解かれていたものの、夢じゃなかった証拠に両手首が微かに赤くなっていた。

「ほんとごめん。跡が残っちゃったな」

気遣うような声が間近で聞こえたため視線を動かしたら、キョウと目が合った。

「痛む、か?」

気まずそうなカオに、さっきまでの激情はない。
そこにあるのは悪戯が見つかった後のワンコのようなしおらしさで、反省の気持ちが痛いほど伝わってきて。
無理やり始まってしまった行為への驚きや怒りを持続させるのはなかなか難しかった。

「ううん、大丈夫」

これが惚れた弱みってやつだなと諦めて微笑んでみせたら、ホッとしたように抱きしめられた。

「ごめん……暴走した。まさか、こんなに自分が嫉妬深い男だったなんて、知らなかった」

「え、しっと……?」

< 119 / 246 >

この作品をシェア

pagetop