謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「…………」
あれ、無言?
「キョウ?」
何かマズいことでも言ってしまったかと、黙り込んでしまった彼を見つめていると、しばらくしてどこか夢見がちな、熱っぽい眼差しとぶつかった。
「…………なんか今、翠が天使に見えた」
「あ、バレちゃった?」
冗談ぽく「ちゃんと羽根しまっといたんだけどなー」と背中を気にするふりしてみせると、キョウがぶはっと吹き出した。
あたしも笑っちゃって、そのまま2人でゴロゴロ、抱き合いながらベッドの上を転がった。
「――ごめんね。キョウってイケメンだしセレブだし、ちょっと偏見持ってた。なんでも手に入って、叶わない願いなんてなくて、悩みなんか何もないお気楽人生でいいわねって」
いつになく素直な気持ちになっていたあたしは、彼の上になり、その固い胸へ頬をつけて、懺悔するように吐露した。
それが通じたのか、骨ばった指があたしの短い髪へもぐり、優しく梳く。
「みんな同じことを考えるらしいな。実際は、そんなこともないんだけど。生まれてこの方、欲しいと思ったものが手に入ったことなんて一度もないし」
「い、一度も? それはさすがに冗談でしょ? 何でも買えるじゃない」