謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
語尾を曖昧にぼかして、視線を宙に泳がせる。
束の間彷徨ったそれがたどり着いた先は――……あたし?
おもむろに、彼の手が伸びてきた。
あたしの顔を引き寄せ、頬を、耳を、愛おし気に撫でてくる。
見つめる眼差しは熱を帯び、触れる指先はどこまでも優しくて、愛されてるんじゃないかと錯覚するほど。
浮足立った鼓動が勝手に走り出してしまう。
「翠に会ってから、おかしいんだ。いろいろ、感情が、コントロールできない」
「……っキョ……」
それはどういう意味かと尋ねようとした唇は、言葉を紡ぐ前にしっとりと塞がれた。
「ん……ふっ」
軽く啄み合い、舌先を触れ合わせる、そんなじゃれ合う様なキスが深いものへと変わるのに、時間はかからなかった。
ほどなくして隙間なく重なった唇は、密やかな水音を零し、お互いの咥内を淫らに探り始める――
「あっ」
唐突に腕を引かれて、くるりと視界が反転した。
組み敷かれる形になったあたしを、キョウが上から見下ろしてくる。
「もう一度、抱きたい。今度は優しくするから……いい?」
がっちり全身で拘束してるくせに、どこか遠慮がちに確認してくる彼。
昨夜の暴挙を反省しているらしい。
ふふ、と頬を緩めつつ、返事代わりに彼の首へ腕を回して、引き寄せた。
すぐに意図を理解した彼が、口元を綻ばせて覆いかぶさってきて――
あたしたちは再び、二人だけの世界へ閉じこもったのだった。