謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
その日を境に、キョウからの連絡が途絶えた。
これは決定的だな。
愛されてると思ったのも、特別になれたと思ったのも。
ただの錯覚だった。
彼にとっては、結局その他大勢の一人にすぎなかった。
――たった1回寝ただけで彼女面する女子の多いこと多いこと。中には婚約者気取りで実家に押しかけてくる子もいて。
婚約者を気取ったつもりはないけど、実家を自宅に変えれば、ほとんどあたしのことじゃない?
ご飯作りに行ってあげるなんて、なんであんなこと言っちゃったんだろう。
あの一言で、“めんどくさい女”認定されたよね。
今まではあたしのこと、ちょっとは気に入ってくれていたのかもしれないけど。
彼女面するようになったらもうおしまい。
そんなイタい女とは会えないってことだろう。
だから、“ごめん”か。
“ごめん。気持ちに応えられなくて”?
“ごめん。カン違いさせちゃって”?
連絡もらえなくなったのが、何よりの証拠だ。
ほんと、あたしのバカ。
イケメンの甘い台詞なんて、芸能人のファンに対するそれと一緒で。
本気なわけないのに。
これでもう、彼とは終わっちゃうのかな……
肩を落とし気味にして、あたしはのろのろと首元を探り、そこに馴染んだネックレスがないことを思い出して、さらに重いため息をついた。
いつものラッキーアイテムがないと、こんな日の仕事は特に上手く運ばない。
今日はもうダメだ。
切り上げて、明日頑張ろう――って、昨日も同じこと言ってたような。
幸い、これはまだ締め切りまで時間があるし大丈夫でしょ。
無理やり言い訳してパソコンの電源を落とし、デスクの引き出しを開けて帰り支度を始めると、向かい側のパソコンから田所が顔を上げた。