謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

やっぱりアニメ関連で使ったんだろうか。
三千万も……?

あまりやりたくなかったけど、こうなったらあの子の部屋のパソコンの履歴、調べてみた方がいいのかもしれない。

考え込んでいたところへ「私は、男だと思う」と静かな声が聞こえて、あたしはハッと顔を跳ねあげた。

発言者は、一番奥のドレッサーに座っていた女の子だった。
たぶん5人のうちで一番年長、一番人気があるらしいオーラが漂う妖艶な美女だ。

「え、アヤさん、モモちゃんて彼氏いたんですか?」
「知らなかったー。2次元にしか興味ないと思ってた」

驚くメンバーへ、彼女は肩をすくめて見せる。

「彼氏かどうかはわからないけど。お金、渡してるっぽい所を見たのよ」

「ほ、本当ですかっ?」
ビンゴよ、それだ!

「どんな男でした!? 特徴は? 藍はどんな感じでした? 嬉しそうだったとか、反対に怯えてるようだったとか!?」

矢継ぎ早に尋ねるあたしへ、彼女は「ごめんなさい」と微苦笑する。

「裏口出たところで封筒渡してて、それをチラッと見かけただけなの。みんないろんな事情抱えてるし、ジロジロ見ちゃ悪いなと思って。ただ……そうね、黒っぽいスーツを着てて、背は高い方だった。暗かったし、覚えてるのはそれくらいかな」

「黒っぽいスーツ……背が高い」

「えーじゃあホストじゃない?」
「売掛払ってたとか?」
「あたしの友達は払えなくて、ウリやらされてたよ」
「あるあるだよねー」

「……なるほど」と深く頷く。
よく言えば一途、悪く言えばハマりやすい子なのよね藍って。

ホストクラブなら、三千万だろうが五千万だろうが、泡のように一瞬で消えてしまうだろう。
ホストへ貢ぐお金を作るためにキャバクラで働いて、黒沼から借金まで……

そのホストが推しの声優さんに似てた、とかなら、ありえない話じゃない。

辻褄は合ってるし、一番しっくりくる。
ホス狂いで人生詰んだ、って話はよく聞くし。
まさか藍も……

暗澹たる気持ちで肩を落としたあたしは、「ありがとうございました。とても参考になりました」と頭をさげた。

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