謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
そうか。
この街には、きっと他の場所より多くのカメラが設置されてる。
“摩天楼”の裏口付近、あるいはそこから続く道路を映すカメラがあれば、その日その場所を通った人の映像が残ってたりしてないかな。
どうしたら映像を見せてもらえるんだろう。
やっぱり警察?
捜索願、出した方がいい?
――警察は相手にしてくれんだろうよ。ただの家出じゃあな。
黒沼はああ言ってたけど……事件性があるかもしれない、とかあたしが多少盛って話せば、真剣に聞いてくれたりしないかな――
「……事件性」
何気なく脳裏へ浮かんだその言葉の不吉な響きに、遅れて緊張が走る。
な、ないよね、事件性なんて。
藍は、本当に今、無事なんだよね?
無事に、どこかで元気に生きてるんだよね?
だって、キョウは大丈夫だって言ってた……
本当に、彼を100%信じていいの?
意地悪な声が、頭のどこかでこだました。
――うちは、いろんな女の子が出入りするから、鉢合わせしちゃったら翠も気まずいだろ?
あたしのことを、たった一人の特別な女性、みたいに抱きしめたくせに。
それは全部、嘘だったのよ?
藍が無事だと言う彼の言葉が、真実であるという保証はどこにもない。
都合のいいセフレを手に入れるための方便だった、という可能性だって――
ううんっ。
さすがにそれはないと信じたい。