謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

数日後。

「……ねぇ加藤ちゃん、これはどういうこと?」

居酒屋の個室に座ったあたしは、隣の総務女子へこっそり囁いていた。

「えへへ」
「えへへ、じゃなくて」

テーブルは掘りごたつ式で、こちら側にいるのはあたしたちと、加藤ちゃんの友人女子3名の計5名。
向かい側に座っているのは、見知らぬスーツ姿の男性4名。
あたしの前の席だけ空いているものの、これはどう見ても――

「すみません。直前で来れなくなっちゃった子がいて」

へらっと笑う彼女をジト目で睨んでから、ため息をついた。

やっぱり合コンなんじゃないの、って。
どうやらあたしは、欠員補充のために誘われたようだ。

今日は藍のことで警察へ相談に行くつもりだったのに、帰り際に交通費の精算で総務へ寄ったのが運の尽きだったな。
「ちょっとお話したいことが! 今夜お時間ありますか!?」なんて、がっちり捕獲されちゃって。

「いいじゃないですかぁ。フリーなんでしょ、相馬さん。失恋の特効薬は、新しい恋ですよっ」

あーしまった。
それもこれも、社内の雑談で不用意に別れたことを漏らしてしまったせいだな。
自分で蒔いた種、かぁ。

仕方ない。
適当に話合わせて、飲んで食べて、さっさと帰ろう。

疲労感を紛らわせるようにこめかみを指で押さえたところで、店内のざわつきを縫ってバタバタと近づく足音が聞こえた。
どうやら最後の一人が到着したらしい。

「やーごめんごめん、幹事なのに遅れちゃって。出がけにクライアントから電話入っちゃっ……え、相馬!? なんでいんの!?」

裏返った声で入口から叫んだのは、なんと田所。
こっちもびっくりしちゃった。

「来れなくなった友達がいたんで、誘っちゃいましたー。いいですよね?」

なぜかドヤ顔な加藤ちゃんに、「お、おうっ」と田所はらしくもなく顔を引きつらせ、挙動不審気味にぎくしゃく、あたしの前へ腰を下ろす。

まぁ確かに気まずいよね、こういう場所で想定外の知り合いと会うのって。

真剣に彼女欲しがってたのにあたしが来ちゃって、田所には申し訳なかったな――そんなことを考えていたら、向かい側から咳払いが聞こえた。

気を取り直したのかそのカオにはすでに笑顔が戻っていて、さっそくその場を仕切っていく。

「ええと、じゃあ初めましての人が多いと思うし、さっそくだけど自己紹介からでいいかな? 野郎の方は全員オレの元同級生で――」

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