謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「えー広告デザイナーなんですか。わ、かっこいーな!」
「いえいえ、名前だけですよ。実際は社畜で、残業の嵐だし」
「あーなるほど。でもいいじゃないですか、好きなことを仕事にできるなんて。亮介もそうだけど、羨ましいですよ」
類は友を呼ぶっていうことなのか、さすが田所の友達だな。
どの人もそれなりにコミュ力があって、初対面でもちゃんと会話を弾ませてくれる。
あたしみたいな、明らかに数合わせで連れてこられたメンバー相手でも。
「おれの何が羨ましいって? 顔? はいはい冗談だって。相馬、飲んでるか? 空いてるじゃん、次、何飲む?」
それでも一番すごいのは、やっぱり田所よね。
別の子としゃべってたはずなのに、あたしのグラスが空いたことにいち早く気づいてくれたり。
「あー……じゃあビールで」
「了解。他、飲み物欲しい人いるー? あ、そこ、もう皿空いてるな。もう少し何か摘まむ? え、何、お前いつももっと食べるだろー美人の前だからってカッコつけてんなよ。ピザ系とかどう? OK?」
同じタイミングで、さっとみんなの希望を取りまとめ、手早く店員さんを呼び止めてオーダーを済ませてくれる。
その間もみんなの会話に口を挟み、盛り上げることも忘れない。
自分には絶対できないことだなと、遠巻きに眺めつつ感心しちゃった。
「どうしたんですか、相馬さん。田所さんに見惚れてます?」
声をかけてきたのは、いつの間にか隣に戻ってきていた加藤ちゃん。
あたしは素直に頷いた。
「あそこまで気遣いできるってすごいよね。あたしならハゲちゃいそう。どうしてあれで彼女ができないんだろうね?」
加藤ちゃんが連れてきた友達3人も、田所の言葉に大ウケしてるし。
かなり好印象な雰囲気に見えるのに。
「良い感じまでは行くみたいですよ。ただ結局、“いいお友達”で止まっちゃうみたいで」
「ふぅん」
「けどまぁここだけの話、田所さんの場合、ゼロから出会いを求めるより、友情から恋愛に発展ってパターンの方が合う気がするんですけどね」
「あぁなるほど」
友情からの、恋愛かぁ。